「うわぁ・・・人いっぱいだね」


夏。夏である。
太陽がギンギラと照りつけ、ノミどもが活動を始める夏である。

オレとサスケを海へと引っ張り出した久遠は、あまりの人の多さに目を見張った。だが、とても楽しそうだ。
それにしても・・・暑い。隣で暑さのせいか顔をしかめているサスケは、来たのなら早く海に入って涼みたいとでも言いたげな表情をしている。


「・・・早く行こうぜ」
「うん!」


腰に持っていた浮き輪をもう一度持ち直し、久遠は駆け出した。


「あ、こら。少しくらい準備体操しないと怪我をするぞ」
「だいじょーぶー!」
「・・・兄さん、」
「・・・ああ、ったく」


呆れた物言いをしながら、オレもゆっくり足を運ぶ。
うずうずとした表情で駆けて行く久遠の背中を見つめるサスケの背中を優しめに押せば、一瞬オレを見てから走って久遠の後を追いかけていった。
少し赤かった耳に、思わず笑みがこぼれる。

さて、そろそろオレもと小走りし始めた途端、何人かの女に行く手を阻まれた。


「あの、お一人ですかぁ?」


過度な肌の露出をしている。
海に来ているはずなのに香水の匂いが漂ってクラクラした。


「・・・いえ。連れが待っているので」
「えぇ〜それって彼女さん?」


腕を組んで胸を押し付けてくる女に、段々と苛立ちが募る。
それを表には出さずに、ただ少し愛想笑いを浮かべてやんわりと腕をほどいた。

掴まれたところは後で念入りに塩水で洗っておこう。
久遠やサスケが一緒になって一生懸命洗い流してくれる様を思い浮かべて、少し笑ってしまった。


「彼女じゃないなら、ね?あっちであたしらと遊ぼ?」
「きっとそっちの方が楽しいってぇ」


有無を言わさず再度腕を掴まれ引っ張られる。
さすがに振り払おうか悩んだ時、誰か小さなぬくもりがオレの腰に抱きついた。

振り返って確認するまでもなく分かってしまう、このぬくもりは。


「残念でしたー!イタチは私達と一緒に海に遊びに来てるんだもんね」
「・・・久遠」
「なにしてんだよ兄さん。遅いと思ったら」
「すまない」


海につかっていたのか、湿っぽい久遠とサスケの体。
太陽に照り付けられたオレの体は水分がなくカラカラだ。

少し恨みがましい目で女達を睨みつけたら、おびえて逃げていった。

依然オレの腰に抱きついたまま、久遠が鼻で笑う。


「ざまぁー!」
「久遠、助けに来てくれたのは嬉しいが口が悪いのはいただけないな」
「だってムカついたもん」


サスケと待ってても来ないしさ、なにしてるのかと思えば逆ナンに遭っちゃってるし。

ふて腐れたように頬を膨らます久遠の頭を撫でる。
もう一度すまないと笑えば、不本意ながらといったところだが許してくれた。


「このイケメン兄弟め」
「オレもかよ」
「当たり前じゃん。言っておくけどさっきから女の子の視線半端ないからね?」
「あまり気分も良くないな」
「うんと沖の方まで泳いじゃう?」
「そうするか」


そうと決まれば。

海に足をつける。
冷たすぎることもなくぬるいこともない、心地よい温度だ。

少し先を歩く久遠とサスケに、今度は遅れないように少し早めに歩いた。


「溺れたらどうしよ」
「心配ない。すぐに助けてやるさ」
「・・・それ以前にお前は浮き輪があるから大丈夫だろ」

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -