夏といえば。
「肝試しだと思うんです」
「「は?」」
夏の暑さは、木ノ葉だろうが砂だろうが霧だろうが、そう・・・私達暁だって関係ない。
暑いもんは暑い。
地下にあるアジトのおかげか暑さは軽減されてるけど、やっぱり暑い。
文字通りへばっているデイダラ、涼しい顔をしてるけどイタチだって暑いはず。
それは私だって例外ない。
なんだよ暁の装束。長袖コートってなんだよ死なす気か。
かといって胸元を開けていると鬼鮫にだらしがないだらはしたないだら言われるのがオチだから、しっかりと着用してるわけだけど。でも暑い。
暑い暑いと思っていたら、余計暑くなってしまった。
先ほどの私の発言に、訝しげに眉を寄せるデイダラ。イタチは至ってポーカーフェイスだ。
「なんだよいきなり、うん」
「いやー暑いじゃん?涼しくなる方法考えてたんだけどさ、」
「だからってなんで肝試し」
「どさくさにまぎれて抱きつく的な桃色ピンクな展開を妄想してた」
「キモい」
今のお前の発言でマイナス五度くらい冷えたんじゃね、と大袈裟に腕をさするデイダラを軽く睨む。
イタチは分かりやすくため息をついた。
・・・つくづく思うけどさ、ほんっとお前ら失礼だよね。
「女だよ?女に抱きつかれて嬉しいとか思わないのお前ら」
「だってオイラお前の事女って認めてねぇし」
「うっぜ超うぜ」
「・・・久遠、口が汚いぞ」
すんまそん。
誠意のこもってない謝り方をすれば、またため息をつかれた。
なにしてもイケメンだからまたムカつく。
***
「・・・結局のところこうなるのか」
「いやーやっぱ言ったからにはしてみたいじゃん?任務ずくしで疲れた体に癒しを」
「肝試しで癒しもクソもあるもんか。うん」
「ねぇクソってう○このことなんだよ知ってた?」
「汚いぞ久遠」
暁のコートを着たまま、私達はアジトの近くの林の中にいた。
なんだかんだで私のバカに付き合ってくれる二人だから、私は少し甘えてしまうのだ。
風で植物が揺れてこすれあい、ガサガサと音がする。
「えっと・・・きゃー」
「・・・なにがしたいんだ、お前は」
女の子ってこんな感じなのかなと思いながらイタチの腕に抱きつけば、振り払われはしないもののやんわりとほどかれた。
ついでに呆れの眼差しを向けられる。
「怖くもないのに抱きつくな」
「あれバレてた?」
「むしろさっきの棒読みな悲鳴でわかんねぇ奴がいるなら見てみてぇな、うん」
どうやら肝試しは向かないらしい。
仮にも忍、仮にも暁、こんな夜の林でビビってる程度じゃあ駄目なんだろうけど・・・うん、こんなにも面白くないとは。
いや私に恐怖心がなさすぎるのか。王道な展開までも果たすことが出来ないなんて・・・!
「・・・戻ろう。なんか悲しくなってきた」
「・・・まぁ、一応ドンマイ」
「・・・忍らしくていいことなんじゃないのか」
「フォローになってないけどありがとう」
三人で肩を並べて歩く。
切実に、彼氏が欲しいなと思った。