太陽が照りつける夏真っ最中な午後。
フローリングに大の字になって寝転ぶオレは、暑さから逃れるためにうちわで自身を扇いでいた。
傀儡の体だった時には感じなかった夏の暑さに、どうもオレは弱いらしい。
やべー
あちー
動きたくねー
でももうそろそろここもオレの体温であったまってきやがった
でも動くのめんどくせー
「サソリさ〜んっ」
「ぶっ」
「なんでそんな無防備にねころがってるんですかおそってって言ってるようなもんですよそれ!いくらでもおそいますけど痛あああああ!!」
「てめぇいきなり腹の上のってくんじゃねーよつーか暑いんだよ退け!」
うちわの角で久遠の頭を殴りつける。
いやんツンデレと囁いた久遠の頬にもう一発。
ついでに起き上がって冷たい場所に移動しれば、当たり前のようについてきたこいつは、当たり前のようにオレにくっついた。
「てめぇ・・・だから暑いっつってんだろが」
「あたしたちの愛に夏の暑さなんて関係ないですよ!」
「その前に愛なんて生まれてねぇよクソが」
「それも遠まわしの愛情表現だって思ってますからあたし」
「お前クッソめんどくせぇ性格だな」
「ありがとうございます!」
「ほめてねぇよ」
どうせ抵抗したところで無駄なのはわかっている。
それに、抵抗する気はさらさらなかった。オレはこいつにこうやって甘えられるのが好きだ。
いや、好きになったのほうが正しいのかもしれない。
こうして甘えられているのに、何故か安心してしまうのはオレなのだ。
久遠の匂いが鼻腔をかすめた。
夏の蒸し暑いこの季節なのに、こいつの匂いはむしろ爽やかなものだった。
「暑いですね」
「なら離れろよ」
「いやです」
「そーだろうと思ったぜ」
満更、でもない。
そろそろここのフローリングもあたたまってしまった。
オレが立てば、当たり前のようにこいつも立って。
オレが歩けば、当たり前のようにひっついてきて。
なんとも言えない、むず痒い気持ち。
ああ、好きだ、と。
そう思ったらさらに暑くなった。