「花火?」
「うん!今日の夜ね、そとのひろばでやっていいかって聞いたらオッケー出たから、長門もやろ!」
グイグイとオレの腕を引っ張ってくる久遠は、今日の夜が今から待ち遠しいようだ。
爛々と輝く目を見て断れる人がいるのだろうか。
否、少なくとも暁メンバーは断れないだろう。別に断る理由なんてない。
オレは迷わず頷いた。
「やった!」
嬉しそうに笑った久遠がそれはもう愛くるしい。
つられてオレも頬を緩めた。
***
「はやくはやくっ!」
「わかったからひっぱるな、久遠」
「楽しそうね久遠」
「もちろん!」
オレと小南の手を引っ張りながら駆け足で外に向かう久遠。
少し後ろを歩くオビトも、面白そうに笑っている。
おせーぞとサソリのお叱りを受けた久遠は、だが嬉しそうな顔のまますみませ〜んとサソリに抱きついた。
鬱陶しそうにするサソリを羨ましそうに見るデイダラ。とても面白い構図だ。
「オレ一番乗りぃ!」
シュボッとライターの火を灯し、花火のパッケージを開けるやいなや火に先端を近づける飛段。
まもなく花火がパチパチと音をたてながら綺麗に光り始めた。
それを合図に次々と花火を取り出すメンバー。
角都と小南は近くの段差に座って眺めている。
「やっぱ芸術は爆発だな、うん!」
「これは花火だが」
「イタチの言うとおりだぜクソダラが。永久の美こそが芸術なんだよ」
「にとうりゅう!見て長門、ほらキレイ!」
両手に花火を持ってブンブン振りかざす久遠。
おい危ないだろうやめろバカ、とオレが手を伸ばして制止する前にオビトが久遠の手を掴んで止めさせていた。
とりあえず安心。
「うどりゃああああああぁぁぁあ!!!」
「うわ、って飛段!てめー花火もって走ってくんな!うん、ってぎゃあああ!」
「逃げてデイダラちゃん超逃げて!ぶはっ」
「笑ってんじゃねぇぞ久遠!イタチも見てねぇで助けろ!」
「いやだ」
「即答っ!?」
・・・安心、できるわけがない。
花火を持って暴走する飛段やデイダラから久遠を庇う位置に立つ。
それに気づいているのか気づいていないのかはわからないが、久遠は笑顔のままサソリに話しかけていた。
相変わらず変態で、時折聞こえてくる言葉にきっとサソリは顔をしかめていることだろう。
「おいオビト。お前もう線香花火すんのか?」
「ああ。あんなきらびやかなのは好まないからな」
「ええはやいでしょー!線香花火は基本最後をしめくくるもんだよ」
「花火に順番なんて関係あるのか?じゃあこの花火は何番目にすればいいんだ?これは?」
嫌味ったらしくこれはこれはと花火を手に取っていくオビトの口元は笑っていた。
「ねちっこいぞオビト」
「とにかくオレはこの花火がしたい」
「じゃああたしもやるから競争しよ!サソリさんもやりません?」
「やってもいいぜ」
「長門は?」
「やろうかな」
四人で一本ずつ線香花火を手にとって、一気にライターに近づける。
ぱち、ぱち。
自分の線香花火よりも、落ちてしまわないように念を送っている久遠を見てしまう。
どんな久遠でも愛おしいと思ってしまうのだから、オレも末期なのかもしれないな、と思っていたらポトリと落ちてしまった線香花火。
あ、長門の負け!
久遠がオレを見て笑う。
「・・・もう一本」
「ほらよ」
「すまない、ありがとう」
「あっ!あぁあ〜落ちた・・・なんでサソリさんとオビトはそんなに落ちないの」
「才能じゃね」「才能だ」
線香花火に才能もへったくれもないはずなのだが。
真剣な顔でコツを聞いている久遠を見て思わず笑ってしまう。
空を見上げれば、満天の星空が広がっていた。