孤児院の畑になった大きなスイカ。
嬉しそうにそれを見ていた久遠は、なにか思いついたような顔をして先生のもとに駆けていった。

あ、これ面倒くさくなる感じのパティーンだ。

散々振り回されてきている元暁今はただのガキなメンバーは顔を見合わせてため息をついた。
今度はなにを思いついたんだろう。楽しみだなんてない、断じてない。

満面の笑みで戻ってきた久遠は一言、


「みんなでスイカわりしよう!」


手には、どこから取ってきたのかけっこうな大きさの棒とはちまきが握られていた。


***


じゃんけんで負けてしまったサソリは大きく舌打ちした。
飛段が一人負けかよダセーと腹を抑えている。死ね。
笑い続ける飛段の腹に一発重たいのを入れ、サソリは久遠からはちまきを受け取った。


「前が見えなくてフラフラしてるサソリさん萌え!」


声の聞こえるほうに手を振りかざせば、バコンと手ごたえのある音がした。
今頃久遠は殴られた場所を押さえながら、だがしかし幸せそうにうっとりとしていることだろう。気持ち悪い。


「がんばれ旦那ー」
「サソリ、もう少し左だ」


イタチの声を頼りに歩みを進める。
案外難しいなコレ。サソリは眉をしかめて思いっきり棒を振り下ろした。


「ちょっ、待っ、えええええええええ痛っっ!!?」
「あ?」


スイカにしては感触がおかしかった気がする。そして飛段とデイダラ、久遠の盛大な笑い声が聞こえる。
疑問に思ったサソリははちまきを外した。


「・・・なにやってんだ鬼鮫」
「こっちのセリフですよ!せっかくトマトに水やりしてたのに振り向いたらいきなり頭をなぐられるなんて・・・!棒!しかも棒!」
「キャラが行方不明になってんぞ」


謝ることなくサソリはスタスタとみんなのもとに歩く。

イタチてめぇうその指示だすんじゃねぇよ。鬼鮫だからいいけど。
ああ、すまない。まぁ、鬼鮫だからいいだろうと思って。

鬼鮫にとってふざけんなこの野郎な会話をしながら、サソリは棒とはちまきをイタチに手渡した。


「・・・オレがやるのか?」
「あ!あたしもフラフラしてるイタチ見たい!」
「オレはそんな不純な理由でわたしたわけじゃねーよ」


照りつける太陽に若干イライラしているサソリである。

早く割って食べないとクサるんじゃないのかコレ、とオビトは心中で思った。
だが楽しそうに笑っている久遠を見て口を出せないでいた。オビトも存外久遠に甘い。
心の中で葛藤するオビトを見ていた長門と小南は、顔を見合わせて少しだけ笑った。


「そもそも、オイラたちの力でスイカなんかわれんのか?・・・うん」
「なぁオレ早くスイカ食いてぇんだけど」


言いながらスイカを蹴る飛段。角都が食い物を蹴るなと飛段を殴った。


「めんどくせぇな。食っちまおうぜ」
「けっきょくサソリさんしか挑戦してないじゃないですかー!あと二回やりましょうよぅ!」
「それやるの絶対オイラとイタチだろ、うん」
「すごいなんでわかったの!?」
「いやわかるだろ」


スイカ割りを諦めて先生にスイカを切ってもらう。

かじりつくと、ほどよい甘みが口内に広がった。


「デイダラちゃん、ほら、あーん」
「すっ、るわけねぇだろ!うん!」


照れるデイダラににやける久遠。
うるさそうに顔をしかめるサソリ。静かにスイカを食すイタチ。
種をとるのに苦戦する飛段に、見かねた角都が箸を持ってきてあげている。
長門と小南が談笑しながらスイカを食べて、いつの間にか黒ゼツが来て小南の膝の上に乗った。
白ゼツはオビトにスイカを分けてもらいに行っている。
トマトの水やりから帰還した鬼鮫が、種ばかりの皿を見て呆然とする。


「あ、ごめん鬼鮫のぶん切ってもらうの忘れてた」


いつも理不尽な奴である。

夏はまだ始まったばかりだ。

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