縁側。
美しい庭園の風景にほぅと感嘆のため息をつく。
そして視線を下にやり、私の太ももに紅の頭を乗せて目を閉じる征十郎の美しきフェイスに、またため息をついた。
今日は天気がいい。
「・・・久遠のそのため息は、感嘆のため息か?」
「よくお分かりで」
「まぁね。君のことなら大抵なんでも分かる」
大方、美しい庭園に思わず息をついたのだろう?そう言って征十郎はわずかに口端を上げる。半分正解。美しい庭園と美しい彼氏様に思わずため息をついたんだよ、とは言わなかった。
征十郎がわずかに動く。質の良い彼の髪の毛が私の腿をくすぐるから少し笑ってしまった。
「一流の庭師に整えさせているからね。美しいのは当たり前だ」
「ほんと綺麗だよ」
程よく日光が当たる庭園の池は、キラキラと輝いている。
さらさらと征十郎の髪の毛を触れば、彼は微笑んで私の頬に手を伸ばしてきた。
そのままするりと撫でられる。
少し首を傾げれば、征十郎は微笑んだまま言った。
「いや、久遠の方が何倍も美しいと思っただけだよ」
「なっ、にを・・・!」
クスリと笑う征十郎に恥ずかしくなった私は慌てて手のひらで彼の目を覆う。
駄目だ。
こんな恥ずかしいことを簡単に口にするから心臓に悪い。
征十郎は起き上がって私の手を取る。
あぁ、熱が冷めない。
「・・・代わろうか。僕が座るから、今度は久遠が寝転ぶといい」
別にそのまま寝ても構わないよ、と続ける彼に甘えて、征十郎の太ももに頭を乗せる。
世界が反転した。
さっきまで、征十郎が見ていた世界と同じ視点。
見上げると、満足げな顔で私の髪の毛を撫でる愛しく美しい彼の瞳がある。
トントンと一定のリズムで優しく頭を撫でられれば、簡単に眠くなってきた。
「久遠」
名前を呼ばれる。
柔らかいものが唇に触れた。
「おやすみ」
征十郎の匂いに包まれながら、私は目を閉じる。