「あぁあぁあぁあぁあ〜〜〜」
暑さと湿気が天敵の夏。夏である。
扇風機が導入された孤児院内でも、さっそく扇風機の前には四人ほどの子どもが集合していた。
きゃぴきゃぴはしゃぐには精神年齢が高すぎた、見た目だけ子どもな団体。
言わずもがな、それは久遠たちご一行である。
扇風機に向かって言葉を発す久遠。声が震えるのを楽しんでビブラートとか言っている。
前言撤回、久遠は見た目も中身もまだガキであった。
「あ〜ぁぁあ〜ららららら〜ぁ」
「・・・お前、よくあきねーな」
ノリすぎて身振り手振りを入れ始めた久遠に、サソリがつっこむ。
見てるこっちが恥ずかしい。
近くにいた長門がクスリと笑った。
「サソリ〜さんも〜やって〜みま〜すか〜」
「うぜぇ」
依然声を震わしながら扇風機の前を陣取る久遠にイラっとしたサソリは、久遠の襟首をつまんでイタチの方に放った。
きゃーと棒読みで悲鳴をあげ、どさくさに紛れてイタチにしがみつく久遠。
これはこれでイラっとした。
「イタチーっ」
「・・・あついのだが」
パタパタとうちわで自身を扇ぐイタチ。
妖艶である。五歳児とは思えないほどの色気がある。
久遠は鼻血が出そうになった。
「ぐっはまぶしい・・・!イタチがまぶしすぎるっ・・・!」
「だから、あつい」
うりうりと顔を胸に押し付けていた久遠は、スキンシップを投げ出したイタチに押し返された。
長門がまたクスリと笑う。
「久遠もこりないな。むしろそんけいする」
「長門、それほめてんのかけなしてんのかわかんねぇぞ」
「ほめてる。・・・たぶん、」
たぶんかよ。
イタチとサソリは顔を見合わせた。なんとも言えない空気である。
しかし久遠が長門の言葉を気にする風もないのでどうでもよくなる。
「長門〜」
「ん」
イタチからもサソリからも見捨てられた(?)久遠は、腕を広げてくれる長門の胸に飛び込んだ。
頬擦りをする久遠の頭を撫でる長門。
非常に微笑ましい。
「ったく・・・長門、お前は久遠にあますぎじゃねぇか」
「そうか?」
「・・・自覚がないのか・・・」
イタチが呆れてため息をついた。
ゆるい空気が流れる。
「久遠、そこのうちわとって」
「これー?」
「あぁ」
「はい、」
「すまない。さすがにくっついたままはあついからな」
「おーすずしー」
股の間に久遠を座らせながら、長門はゆるゆるとうちわを扇ぐ。
うん、平和だ。