人は時として、無性にやるせなくなったりだとか、泣きたくなったりだとか、甘えたくなったりだとかするときがある・・・と私は思う。
あまり聞こえのいい話ではないけれど、生理の前だとかは特にそう。
精神も身体も不安定で、私の場合、無性に不安になるのだ。
忍である前に一人の人間として、死への恐怖だってあるし生への執着だってある。
でもそれでも忍であるからには、覚悟をしなくちゃいけないわけで。
そんな矛盾した存在である忍でいることが、たまらなく不安なのだ。
ああ、なんとも情けない話。
「おーどうしたぁ?すげぇ暗ぇ顔してっけどよ」
「・・・はぁー」
「いやいやなんで今ため息つかれたんだオレ?」
暁のメンバーのうち、不死コンビと呼ばれるこの二人と行動を共にしていると、時々疲れるときがある。
だってこいつら不死だし。飛段とか殺しても死なないし。
だからおのずと戦い方も雑になるんだろうな、と思う。
とどのつまり、心臓に悪いんだ。
「飛段は気楽でいいよねー」
「んあ?どーゆ意味だよそれ」
「言ったまんまじゃないのか」
「・・・なんかよくわかんねーけど角都、お前に言われたらムカつくぜ」
言いながら飛段が顔をしかめる。
角都は知らん顔で、今日はここに泊まるぞと宿を指差した。
「すごいボロいんだけど」
「ゲハハッ!諦めろ久遠、こいつといるといつもこうだぜぇ?」
「うるさい黙れ。暁の財布役を任されているオレの身にもなってみろ」
何回か聞いた角都の言葉を軽く聞き流しながら、私達はオンボロの宿に入っていった。
***
金を惜しむ角都が、部屋をふたつも取ってくれるはずがない。
角都と飛段に挟まれて眠りにつくのも慣れたもので、いちいち顔を赤く染めていたあの頃が懐かしく思えた。
「電気消すぞ」
「おう」
「はーい」
ぱちん、
部屋が真っ暗になる。
ごそごそと布団に潜る、くぐもった音がする。
ああ、また。
何故かわからないけど、不安がどっと押し寄せた。
覚悟、覚悟しないと。忍なんていつ死ぬかわからないじゃないか。
「・・・久遠、」
大きな手が私の手を簡単に包む。
普段の粗暴な性格なんて感じられない、すごく優しい感覚に、私は思わず泣きそうになった。
「ったくシケた面してんじゃねぇよ」
「、うん」
「なんの心配してっか知らねーけどよ、お前はオレが守ってやるからよぉ」
「それはやだ。角都がいい」
「はぁ!?」
「はぁ・・・飛段、お前だと安全ではないからに決まっているだろう」
飛段が私の手を握って、角都が不器用に頭を撫でてくれる。
ぜったいに、失くしたくない、大切なふたり。
自分が死ぬことよりなにより、ふたりがいなくなることのほうが、私は恐くてたまらない。
「不死コンビの名は、伊達じゃないよね」
「「当たり前だ」」
力強いふたりの言葉に、安心した私は簡単に眠気に身をゆだねた。