いやさ、そりゃあ見た目は子どもだよ?
でもあくまで子どもなのは見た目だけでさ、中身はぴちぴちの高校生なんだよあたし。
暗くなりつつある空をボーっと眺めながら、あたしは小さくため息をつく。
高校生にもなって迷子とか、すんごい恥ずかしいんだけど。
そう、あたしは迷子になってしまったのだ。
今日は天気がいいからといってみんなで近くの公園に遊びに来ていた。
いつも通りデイダラを追いかけまわして遊んでいたのに、いつの間にか迷子になってしまっていたのだ。しかも迷子になってることすら気づかずに走り続けてたから、ずっと孤児院にいたあたしにとっては面識のない土地名が書かれたプレートを見て愕然とした。
「うう・・・みんなー」
カァカァとカラスが鳴いている。
いや、もはやカラスの鳴き声がアホーアホーに聞こえる、なめてんのかカラス。
歩きつかれた小さな足はもう限界で、これ以上さまよっても孤児院にはたどり着かないんだろうな。ああ泣きそうだ。
あたしはその場に座り込んで、膝に顔を埋めた。
てゆーかいっそ誘拐してくれないかな誰か。誰かあたしの相手してください寂しすぎて死ぬ。自分のおしゃべりな性格が憎たらしくなってくるほど、この寂しさ半端ないんだけど。
なんか鬼鮫ですら恋しい。
「・・・サソリさーん」
ああ、こんな時にいつも見つけて手を差し伸べてくれるのはサソリさんだったなぁ。
オレ様で横暴なくせして、本当は不器用なだけでまぁそこがグッっとくるんだけどねとても、うん。
「デイダラー・・・」
きっと一番取り乱してるのはデイダラなんだろうな。
ツンデレだけど人一倍心配性で、ツンデレだけど。
「ううー・・・イタチ・・・」
根っから優しいイタチはデイダラに負けず劣らず心配して、でも冷静にあたしがいそうな場所とか分析してくれてるんだろうな。
ごめんイタチ、きっとあなたの想像を超えるとこにいる。
ああ、本格的に暗くなってきた。
いよいよ涙腺をもっていかれそうになった時、懐かしさを感じる声があたしを呼んだ気がして顔を上げる。
「・・・っ!久遠ー・・・!」
「、飛段?」
バカでかい飛段の声が段々近づいてくる。
あたしは思わず零れ落ちた涙とともに、声がするほうに駆け出した。
***
「ハァーッ!?」
飛段の声が公園に響き渡った。
何事か、と集まる視線を煩わしく思いながらオレは顔をしかめる。
隣にいる小南が心配そうに口元に手を当てた。
「めぼしはついてるのか、リーダー」
リーダーと呼ぶクセが取れない角都に首を横に振れば、デイダラがひとり焦って宛もないまま駆け出そうとする。そんなデイダラの襟首を掴みながら、サソリは言った。
「ったくあのバカが」
「くっ首!だんな首しまってる!うん!」
鬼鮫が至極めんどくさそうにため息をついた。
まったく、久遠はいつの時代も手を煩わせてくれる。
だがそれを苦と思わないオレも、オレだが。
「・・・ゼツ、」
鼻は利くのか?イタチが小さなネコの肢体を持ち上げて問うた。
「んー多分ね」「ヤッテミル価値ハアルナ」
「ならゼツの誘導でオレたちはまわりに目をくばりながら久遠をさがすぞ」
久しぶりに作戦を練って、久しぶりにオレの言葉でメンバーを動かした。
少し懐かしいこの感覚に、マダラ(今はオビトだがいかんせんクセというものは抜けない)は小さく笑う。
「・・・いつからこんな仲間いしきをもつようになったんだ、」
と呟きながら。
***
疲れたように眠る久遠を見ながら、オレは安堵の息を吐き出した。
こんなの柄じゃない、ひとりの小娘にここまで気持ちを振り回されるなんて。
柄じゃないが、振り回されているという事実は変わらない。
「トビ・・・じゃなくてマダ・・・、オビト。でんき消すぞ?」
"オビト"であるオレに対して未だ接し方が不安定なデイダラと話すのは、久方ぶりだ。
オレは少し笑って、小さく頷いた。
「ああ、・・・おやすみ」
少しずつ変化していく。
その中心にいるのは、いつだってこの少女。