ふらふらと青白い顔をした久遠が壁に手をつけながら歩いている姿を見て、飛段は眉を寄せて駆け寄った。

あ、飛段、と力なく笑う久遠に飛段の眉間の皺は本数を増やしていく。


「どーしたぁ?」
「いやちょっと生理痛」
「あっさり言う事かソレ」


女は大変だなと顔をしかめながら、飛段は久遠の肩に手を回す。
だるそうに腹部を抑えながら体を預けてくる久遠。飛段は何故か少しの優越感を感じた。久遠が飛段を頼るのは、珍しいことであった。
普段は兄妹みたいに接している分、そういうことは皆無に等しかったからだ。

場違いにも口角が上がる。


「オラもうちょっとだろ。力振り絞って歩けー」
「・・・ん、」
「・・・おい?おい久遠?・・・っ久遠!」


沈むように床に座り込む久遠に、飛段はさっきまでの優越感も忘れて慌てた。
一緒にかがんで背中をさする。腹部が痛い久遠にとって飛段の行為は無駄だったが、飛段は焦ってそれどころではなかった。


「おいっ、誰かいねぇのかよぉ!?」


叫んでみても、応答はない。
大方飛段のことだからどうせなんでもないだろうと思われているのだろう。
哀れ飛段。だが今はそれどころではない。

苦しそうに冷や汗をかきながらうずくまる久遠を見て、飛段はもう一度叫んだ。


「久遠がっ!!!!!」


バタバタバタンッ

間髪入れずに開いた各部屋の扉。
飛段は複雑な気持ちで、暁のメンバーを見渡した。


***


「お前、生理痛が酷い部類の人間か」


枕元に肘をつきながら言うサソリの言葉に、久遠はまだ若干青白い顔のまま頷いた。
駆けつけたサソリが調合してくれた薬で、大分痛みは和らいではいるがまだ若干引きずっている。


「もう下腹部と腰が痛くて痛くてたまんないです。ついでにドアップなサソリさんのビューティフォーフェイスもたまんないで痛っ!!あたし病人っ!!」
「ああ病気だな変態という名の病気だお前は、うん」


珍しく静かにご立腹しているデイダラに久遠はしょんぼりと掛け布団で顔を隠した。
フンッ、と顔を逸らしてしまったデイダラに、ツンデレ萌えと呟いた久遠。
今度はサソリが制裁を下す。


「つーかセーリツウ?ってそんなに痛ぇもんなのか?」


飛段が純粋な質問を投げかける。
すぐさまそんな飛段の頭を引っぱたいたのは、意外にもイタチだった。


「生理だのなんだの軽々しく口にするな」
「ってぇな!人の痛みも知らねぇクソヤロウがっ!裁き下すぞオラ!」
「やめてふたりともっ あたしのために争わないでっ!・・・って一回言ってみたかったんですよね」
「お前一回死んでこい」


睨み合っていたイタチと飛段は力が抜けて、同時にどうでもよくなってその場に座る。


「辛いか」
「心配ありがとうございますイタチ兄さんやっぱり優しいですね惚れ直します」
「大丈夫そうだな」
「ウゼェくらいに元気になったじゃねーか。オイラは復活しないうちに部屋ん戻るぜ、うん」
「オレも」


立ち上がりドアに向かって歩き始めたデイダラ達に向かって手を振り、久遠は再度布団に潜り込む。

そんな彼女に、ずしりとなにか重いものが乗った。


「・・・ちょ、飛段ー」
「おう」
「重いけど」
「アレだ。病気のときは人肌が恋しくなるもんなんだろぉ?ゲハハッ」
「んー・・・まぁ、ありがと」


ゆるゆると髪の毛を撫でられながら、久遠は微笑んで目を閉じた。

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