転生直後、あたしを起こしてくれたあのキュートな男の子。
いちいちするしぐさが可愛くて、愛らしいあの子に、あたしは。
「あのね、ぼくね、久遠ちゃんすき!」
「え」
現在進行形で、コクられている。
真正面に座り込んで、あたしの頬を小さな手で固定して、目を見て。
よよよよくそんな恥ずかしげもなく・・・!と思ったけど、この子は見た目も中身も子どもなんだと納得した。いやしないけど。
それよりなにより、この子が言った好きの言葉に部屋の温度が下がったのは気のせいかな気のせいだよね。
禍々しいオーラを感じるのは気のせい・・・
「だ め だ」
気のせいじゃなかったあああ!
腕を組んで仁王立ちしたオビトが、五歳児とは思えないくらいのオーラを放ちながらあたし達を見下ろしている。
「久遠ちゃんは、ぼくのこときらい?」
そして空気を読め少年んんん!
殺されそう!殺されそう!
目だけで射ぬかれて殺されそう!
とりあえずこの子を背中に庇ってオビトを見上げる。
そのオビトの背後から、イタチが姿を現した。
たたた助かった、イタチになんとかしてもらおう。
「なにしてる」
「イタチか・・・いや、久遠が告白まがいなことをされていたからな。とめているところだ」
「なんだと、」
漆黒の相貌があたしを射ぬく(はぁんイタチ萌え!)。
え、なんか、余計ややこしくなってないッスか。
思わずトビ口調になったあたしを許してほしい。
「久遠、」
「ははははい!」
「だめだ」
オビトとそっくりそのまま同じ言葉を口にして、イタチはあたしの手をとった。
同時に、反対側の手も引っ張られる。
イタチは目に見えて嫌そうな顔をした。いや、うん、イケメンが凄むと迫力あります。ていうかイケメンすぎて直視できない。
「久遠をはなせ、こども」
「やだ!ぼくが久遠ちゃんとおあそびしてたんだもん!」
「っていうかイタチもこどもですけど・・・?」
ふたつの力に引っ張られ、あたしの腕は早くも悲鳴をあげていた。
痛い痛い痛いいいい!
手加減してくれないかな痛いよ!!?
涙を浮かべていると、突然感じた浮遊感。
ぎゃ、だなんて女子らしからぬ声を上げて背後を見れば、あたしより少し背の高い長門があたしを持ち上げていた。
た、助かった・・・!
「なにしてるんだ?」
「いやべつになにも、」
「久遠が告白されたって聞いたから」
「イタチいいいいい!」
長門の瞳が剣呑に煌めく。
あたしの脇にあった手はいつの間にか背中に回って、そのまま強く抱き締められた。
「ぐ、ぇ、長門さんくるしいっ」
「ざんねんだが少年、久遠はわたせない」
いやだから今はあなたも少年ですってば。
男の子はポカーンとあたし達を見つめて、それから不利と悟ったのか、
「っまたあそぼうね久遠ちゃんっ」
なんともかわいらしい捨て台詞を吐いて走って行った。
***
その日の夜。
「ああ、あいつか。確かに久遠に気があるようにみえてたな」
あたしの頭を鷲掴みにしながらサソリさんが言った。
い、痛い、けど、幸せええ・・・!
デレデレとサソリさんを見上げれば、気持ち悪そうに顔をしかめて思い切り逸らされてしまった。
そんなSなとこも好きですけどね!
飛段が面白くなさそうに唇を尖らす。
「つーかなにコクられてんだよぉ、久遠」
「いや、だっででででで!サソリさん愛がいたいですっ」
「ったく、オレのひろいモンに手ぇだしやがって」
何故に不機嫌・・・
痛む頭を押さえながら、サソリさんを覗き込めば、今度はぶっきらぼうに頭を撫でてくれた。きゅん。
「おい!久遠がコクられたってほんとかっ?うん!」
「・・・だれだややこしいやつに教えたの」
『ボクだよ〜ぶぎゃっ』
サソリさんが白ゼツの顔面を踏み潰した。御愁傷様、ゼツ。
「だっ、だれだよそいつ!」
「あっれ〜?デイダラちゃんヤキモチィ?かっわいいーっ」
「は、な、ちがっ・・・」
問答無用っ!
がばりと抱きつけばバランスを崩したデイダラは後方に倒れた。
「いたっ!てめぇ久遠!」
「デイダラがおこった!」
「オレも混ぜろぉ!」
「・・・てめーらうるせぇ」
(花のように笑う久遠を、)
(オレ達の光を、)
(奪われてたまるか)
(奪わないでくれ)
(あわよくば、)
(オレの隣で笑ってほしい、なんて)