暁のメンバーは、久遠の変態っぷりにほとほと疲れていた。
直接久遠からアタックという名の猥褻行為や言葉を浴びせられるのは言わずもがな、芸術コンビとイタチである。
他のメンバーも直接ではないにしろ、三人がいないときにこれでもかというほどありふれんばかりの愛情を語られていた。
慣れることはできないだろう。
なにより気持ち悪い。
限界がきたのは、毎日追いかけ回されるデイダラだった。
「旦那ぁ!オイラもう無理だ我慢できねぇ、うん!」
「いきなりなんだよって蹴り飛ばしてぇが、なんとなくわかった。ごしゅーしょーさま」
「諦めてねぇでなんかいい案くれよ!オイラよりうん倍生きてっだろ!」
「一言余計なんだよクソダラが。それにそれが人にものを頼む態度かよクソダラが。あぁ?」
「旦那、目!目が怖ぇ!」
歳の差の威厳か、縮み上がるデイダラ。
サソリはため息をついて座り直した。
「・・・まぁ、あいつの変態っぷりにはオレも最近疲れてきたとこだ」
「だろ。ヒートアップしてっだろアレ」
「昨日なんてなに妄想してんのか知らねぇが、頬染めながら踏んでくださいとか言いやがった」
「プライドがねーんだあいつ、うん」
「マジで吐く五秒前だったぜ・・・」
「MH5か」
サソリとデイダラは、同時にため息をついた。
久遠の変態を治すのは無理だろう。
だがしかし、一日くらいは抑えてくれないと、限界が・・・
サソリはハッ、となにかを思い付いたように顔をあげた。
***
「おい久遠」
「その声はサソリさん!」
すぐさま駆け寄ってきた久遠。
勢いで抱きつかんとする彼女の頭をデイダラが抑え、作戦は結構された。
「今日一日、その変態っぷりを封印しろ」
「・・・へ?」
「さもなくばアレだ。もう喋ってやんねー、うん」
「・・・ええ!?」
あたふたと慌て始めた久遠に、ふたりはニヤリと笑う。
もう喋ってやらない。
この言葉は、久遠にとって効果は抜群だった。
「ちったぁ休ませろ」
「わかったか?うん」
「う、う・・・はい・・・」
それからの久遠は、気持ち悪かった。
いや、それはもう変態がなくなるだけでありがたいものだが、どうにも違和感が拭えない。
慣れとは恐ろしいなと感じ始めた頃イタチと鬼鮫が帰ってきた。
その時も久遠は抱きつきたい衝動に駆られたがなんとか我慢し、笑顔だけに留めたのだ。
イタチは逆に、鳥肌を立てた。
「・・・どういうことだ、サソリ」
「いや、まぁアレだ。久遠の変態っぷりに疲れたからまぁ・・・」
「今すぐやめさせろ気持ち悪い」
「いやオイラも思った、うん」
ウズウズとソファーに座り込む久遠に、サソリが近づく。
すると、久遠は忍も劣るような速さでビュンッとその場から立ち退いた。
は?となる一同。
鬼鮫までもが、面食らった顔をしているのだから、避けられた本人は相当面食らったに違いない。
予想は的中、サソリは心底驚いたようにして久遠を見ていた。
「なんで逃げんだよ」
「ああっ・・・喋らないでくださいサソリさん、制御が効かなくなります・・・!」
今必死に抑えてるんですからね!
と視線の合わないまま言われ、サソリは何故か寂しいような気持ちに襲われた。
ん?寂しい?いやいやマジねぇわ。
オレがこんな変態ヤローに振り回されてたまるか。
「こっち向かねぇと一生シカトすっぞ」
「ええええ!!?」
「こっち向け」
「いやでも、サソリさんやデイダラやイタチさん見ると、嫌でも変態発動しちゃうってゆーか、あんまりよろしくないです。一生喋られないの嫌だし・・・」
サソリは急に、久遠が愛おしくなった。
確かに、毎日毎日変態行動を起こされるのも気が滅入る。
だがしかし。それに慣れてしまった今となっては、それが当たり前であって、変態でない久遠は久遠ではなかった。
子どもから離れられない親のような心境になってしまっていたのだ。
「それ撤回」
「え」
「思う存分変態さらけ出せ」
「っサソリさぁぁぁぁん!!!」
がばりと腰に巻きつく感触に、満更でもない自分がいるのはとっくに気づいている。