いつからかわからないけど、あたしは刻の家で一緒に暮らしていた。
多少の歪みを幼いながらに感じていても、それでも楽しくて愛おしい日々。
その頃は寧々音も生きてて、刻と三人で毎日遊んでたっけ。
異能を持たないあたしが、なんで遊べたのかは覚えてない、けど。
『ねねねー!ときー!ブランコやろうよ!』
『おもしろそうなのー』
『ブランコだぁ?んなガキがするあそびなんかしたくねーヨ』
『とき、ガキじゃん』
思えばあの頃のあたしは、子どものわりには随分的確なツッコミを入れてたなぁ。
『うーん。でもブランコふたつしかないね』
『ひとつがふたりのりすればいいの』
『オレやんねぇ。寧々音と久遠ふたりであそんでろヨ』
そう言って鉄の柵に腰掛けた刻を、寧々音は強引に引っ張った。
純真無垢な表情で、いっしょにやろう?と首をかしげられた刻に、もはや逃げ場はなかったよね。
『ときはひとりのりにする?』
『あたりめーだろ。寧々音はともかくおまえとのったらぜったい死ぬ』
『なにそれーっ、じゃああたしとねねねがのったらねねねが死んじゃうじゃん』
『・・・っは!』
ほんと、頭良いんだか悪いんだか、ていうか絶対死ぬなんてありえないし。
『ンー・・・!わかった、オレが久遠とのる!覚悟をきめた!』
『(ねねねとときがふたりのりするっていう選択肢はないんだ)うん、わかった。ねねねはそれでもいい?』
『かまわないの』
寧々音がひとりでブランコをこぎ始めた。
笑う寧々音に笑い返して、あたしと刻はどっちが立つかで争ったっけ・・・?
『オレが立つ!でないと死ぬ!』
『あたしが立つー!とき、こぐのよわっちいもん』
『安全運転だヨ!久遠のはらんぼーすぎんだ!』
『もっと、でんじゃらすをもとめようよ!』
『危険もとめてなにになるんだヨ!』
言い合ってるうちにふたりともブランコの上に立って、ギィギィ揺らしながらいつの間にか仲良くこいでたね。
ほんと、子どもって単純だなぁって思うよ。
『えいっ』
『うわっ!?てめ勢いよく持ち上げんナ!』
『ふたりとも楽しそうなのー』
幸せ。そう、幸せだったな。
なにげない日常、なにげない会話、喧嘩。
当たり前じゃないことを、当たり前だと思ってた。
「・・・なに考えこんでんだヨ」
「ちょっとねー」
「マグネス、久遠ちゃん、遊んで〜?」
・・・いいんだ、生きててくれたら。
たとえそれが、偽りだとしても。
あたしは今も、幸せだから。