「と、いうわけでピクニックしましょう!!」
「なにがどういうわけでそうなったんだよ、うん」


開口一番に元気よく手を上げながら言った久遠に、即座につっこんだのはデイダラだった。さすがである。
今日は珍しく、暁メンバーの誰にも任務が入っていないという奇跡が起きたのだ。
それを小耳に挟んだ久遠の、低脳な頭で考えた結果がコレである。
久遠はもう行く気満々で、どこから調達したのかバスケットを片手に近くにいた飛段の手を取った。


「だってこんなみんなそろうなんて、滅多とないよ?行こうよデイダラちゃん!!」
「ダリー」
「久遠がそう言うなら行ってやってもいいぜぇ?」
「さっすが飛段!」
「・・・ピクニックなんてくだらねぇ・・・が、行ってやらんこともねぇ」
「・・・素直じゃないなサソリ。オレも行くぞ」


サソリがダルそうに首の後ろをかきながら、立ち上がった。
イタチも笑いをかみ殺しながら立ち上がる。
デイダラは、え、と固まった。みんな行かないと思っていたのだ。そしてそれをいいことに最終的には仕方ねぇなとひとり立ち上がって久遠とふたりでピクニックに行く、というシナリオは早くも崩れ去った。


「歩いていたら賞金首と出くわすかもしれないな」
「いや血祭りにあげないでよ?角都」


いや、いやいやいや。なんでみんなそんなに乗り気なんだ?うん。

デイダラは目を見開いて角都を見た。
鬼鮫は鮫肌を担ぎなおしながら、私はいいですと遠慮した。


「いーよ別に鬼鮫いない間にイタチ兄さんといちゃいちゃしてくるから!いっつも邪魔されるし」
「それはアナタが任務に出る寸前になってイタチさんにじゃれようとするからでしょう」


もっともな意見を述べた鬼鮫に久遠は頬を膨らます。
少し可愛いと思ってしまった一同。各々がそれを頭の中で必死に否定した(飛段以外)。


「んー、ゼツはどこにいるかわかんないし・・・リーダー達は遠いし・・・まぁいっか」
「オレと飛段と角都とイタチとお前の五人だな」


サソリがデイダラを見ながらニヤリと笑って言った。歯軋りをするデイダラ。
そんなデイダラの気も知らず、久遠はみんなじゃないのが残念ですけどサソリさんやイタチ兄さんいるしいっかー、とほくほくしていた。そしてオレもいんだろが、と飛段に頭を殴られている。


「じゃあ、行きましょー!!!」
「あっ、ちょっ」
「うわっ?」


思わず久遠の手首を掴んでしまったデイダラは、しまったと顔をしかめた。
だがこうなってしまえば仕方ない。
声が小さくなっているのを自覚しながらオイラも行く・・・と呟く。
返事がないことに不安になったデイダラは、うつむかせていた顔を上げて久遠を見た。


「っデイダラちゃん・・・!!」
「げっ・・・!!」


頬を真っ赤に染めて鼻息を荒くする久遠を見たデイダラは、後悔の念に押しつぶされるのだった。


***


アジトの近くに広い草原が広がっている。
どの里ともあまり近くなく、ピクニックをするには最適だ。
徒歩五分のところに位置するその草原に、暁のメンバーは拍子抜けした。近すぎる。


「もっと遠足みたいなのかと思っていた」


角都の呟きに頷いた者、数名。言わずもがな久遠以外である。


「それより早くなんか食いてぇー」


間の抜けた声で飛段が言った。その視線はバスケットに注がれている。


「だめ!まだお昼になってないじゃん。食べる前になんか遊びたい」


久遠はバスケットを死守しながらウキウキした様子で提案した。
遊び?とデイダラが首をかしげる。
デイダラちゃんかわういー!!と発狂しながら飛びつかんとする久遠を腕に押さえ込み、サソリはなにすんだよと問う。
サソリも溺愛している久遠にとって、サソリがとった行動はまったくもって無意味であった。頬が蒸気している。


「おおお、鬼ごっこ、とかどうですか?てゆーかサソリさんいい匂い」
「黙れ。とにかく黙れ。忍が鬼ごっこだぁ?黙れ」
「酷い!!!?」


めそめそとサソリの腕からイタチの傍に移動する久遠。
イタチは小さく微笑んで久遠の頭を撫でた。最初からそれが目的だった久遠は、嬉しそうにイタチに擦り寄る。
飛段とデイダラが嫉妬心こもった視線をイタチに向けた。角都がため息をつく。


「じゃあ隠れん、」
「もうお前しゃべんな」
「酷い!!??」
「確かにこの歳になってかくれんぼは気が引けるぞ」


角都の言葉に一同は固まって角都を凝視した。
刹那、ああー・・・という顔をする。不愉快だった角都は眉根を寄せた。


「・・・食べようか」
「・・・それがいいな」
「ゲハッ、待ちくたびれたぜぇ」


どんな遊びを想像してもシュールな画になることを悟った久遠は、バスケットを広げた。いくつものサンドウィッチが綺麗にならんでいる。


「おおーっ!!うまそうっ!!!」


飛段が目を輝かせた。
デイダラもびっくりして瞳を丸くする。
久遠は得意げに笑って召し上がれ〜、とサンドウィッチをひとつ口に含みながら言った。卵が飛ぶ。間一髪でそれをよけた角都が、はしたないぞと久遠を叱った。

誰がこんな、平和な暁を想像するだろうか。


「・・・楽しそうだな」
「ええ」
「今度は混ぜてもらいたいものだ」


木陰でそっと見守っていたペインと小南とマダラは、微笑ましげにその笑う。
その気配に気づいたのか、久遠以外の目が一瞬マダラ達を捕えて罰が悪そうな顔をした。

今日くらいは、許してやる。

口ぱくでそう伝えたペインに、メンバーは小さく頷く。


「あっ、飛段それオイラが食べようとしてたんだよ、うん!!」
「ゲハハハ!!そんなの関係ねぇよ!!早いもん勝ちだ!!」
「ふたりとも少し静かにしろ。それと飛段汚い。コートが汚れたら弁償だからな」
「うっふふー♪サソリさん、あーん」
「あ?誰がするか」
「団子はないのか?久遠」


・・・シュールだ。

ペイン達はピクニックを楽しむ六人に背を向けて地を蹴った。

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