悲しいことがあったとき、あいつのそばにはいつもイタチかサソリの旦那がいた。
そのたびにモヤモヤと霧がかかったような気持ちになる。
そんな気持ちに気づかないフリをして、オイラはいつも気持ちとは裏腹の言動。
今日は任務も入ってない。
あいつがいるであろうリビングに足を運んでいると、あいつの部屋の中からなにかすすり泣いてるような声が聞こえた。
咄嗟に足を止めて聞き耳をたてる。
サソリの旦那の低い声と、久遠の、涙声。
ああ、また、旦那の前だ。
いつもいつも、久遠は、旦那の前で涙を見せる。
モヤモヤ、モヤモヤ。
霧がかかる。
オイラじゃ頼りになんねーのかよ。そりゃ、一番年下で、大したことできねーかもしんねぇけどよ。
「・・・少しは頼ってくれたって、いいじゃねーか。・・・うん」
思わず呟いた言葉には、すすり泣く声しか返ってこない。
歯がゆくて、情けなくて、オイラは血が滲み出るほどに拳を握る。
こんな、こんな歯がゆい思いするくらいなら・・・
「っ久遠!」
「へ、?」
「あ?」
ベッドに腰掛けながら向かい合うふたりの間に入って久遠の正面を陣取る。
旦那の舌打ちが聞こえた気がしたけど、そんなのかまってらんねぇ。
「っか、悲しいことがあるなら・・・頼りねーかもしんねぇ、けど。オイラもいるんだからな!・・・うん」
「で、デイダラ・・・」
目に涙をためてオイラを見上げる久遠。
ああ、こんな表情、旦那やイタチは見てたのか。
場違いな嫉妬心に気づかないフリをして、オイラは久遠を抱き締めた。
背中に回る細い腕。
妙な優越感を感じながら、オイラは強く久遠を抱え込む。
「デイダラ犠牲になってくれるの?あたしのために・・・!」
「ほー?そりゃありがてぇな。ならデイダラ、来い」
「・・・んっ?」
待て、なんだこの展開?
キラキラとした瞳で見上げてくる久遠。不適に笑う旦那。
ダメだ意味わかんねぇ。
「ごめんねデイダラありがとう、デイダラの勇姿は忘れないから!」
「来いデイダラ。試作品を飲んでもらうぞ」
「・・・はあぁ!?」
さっきとはうってかわって笑顔の久遠。
は?ふざけんなよ、うん!!!
「いってらっしゃいデイダラちゃん!」
「てめぇ後で殺す!」
「オラ早くしろデイダラ」
けどまぁ、久遠が元気ならいいか、なんてな。・・・うん、