「っと、はいこれ全部」
「・・・すまない、助かる」
「うん」
大量の資料に押し潰されそうになりながらも、久遠はちゃんと運んできてくれた。
俺の秘書である久遠には、身近なことを何から何までしてもらっている。
秘書ならば一緒にいられるのではないか、というテマリの提案だ。
「でも、まだあるんだ」
「これ以上にか」
「うん。残念ながら」
風影の仕事は疲れるが、これは俺の選んだ道。
それに今は、久遠がいる。
傍にいる、ただそれだけで疲れなんて感じないほどに癒されるのだ。
「取ってくるから、目を通してて」
「わかった」
「よし、いってきま、」
「久遠」
言葉を遮って口づける。
久遠は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに応じてくれた。
・・・いつもありがとう。
世話をかける。
これからもずっと、傍にいてくれ。
そんな想いを込めて。
***
「久遠」
言葉を遮られて体を引き寄せられたかと思えば、優しく唇を重ねられた。
びっくりしたけれど、嬉しかった。
最近の我愛羅は、表情こそあまり変わらないけれどこうやって甘えてくれる。
愛されている。
そう感じれることが、どれだけ幸せなことか、この人はきっと分かってるのだろう。
「ん、じゃあ取ってくるから」
「ああ、頼む」
こんな会話なんかでも、いちいち幸せを噛みしめるわたしは重症だ。
でも、それでもいい。
我愛羅の傍に。
ずっと傍にいる。
ありがとう我愛羅。
これからもお世話になります。
ずっと傍にいてください。
そんな想いを込めて、笑ってみせれば。
彼も少し笑ってわたしの頬を優しくなでた。
窓辺のカーテンが揺れている。
わたしは明日も、その次の日も、この先ずっと、
我愛羅を愛し続ける。
血と泪
(流した血と泪のぶんだけ、)
(幸せになろう)