な ん で こ う な っ た !!!!!?
ただいまあたしは混乱している。盛大に混乱している。現在進行形で混乱している。簡潔にまとめれば混乱なうである。
あたしの背中から伝わってくる人じゃない冷たい体温。つかこれ体温って言わねぇよ冷え性やろうが。あたしまで寒いんじゃボケ。レンジでチンされてこいやゴラ。
なんてことは言えない。だってここは満員電車ならぬ満員バスなのだから!!!
当の本人は涼しい顔(見えないから憶測だけど)であたしの背後から窓に手を伸ばし、綺麗にバランスを保っている。無駄に爽やかなイケメンだ、女子がきゃあきゃあ騒いでいる。黙れミーハー女ども!!
いやほんとマジでふざけんな。
なんでよりによって今日雪比奈と任務だよマジふざけんな捜シ者コノヤロー。
爽やか笑顔で押し付けやがって。
「久遠」
背後から雪比奈があたしを呼ぶ。
ぎゅうぎゅうと体を押し付けてくるあたり、こいつはあたしに殺されたいのか。絶対返り討ちにされるけど。
若干顔がひきつるのはしょうがない、あたしは低い声で応答した。
「なに」
「せまい」
「あたしのほうがせまいわふざけんな。なにさっきから体押し付けてきてんだよクソが」
「・・・口が悪い」
「苛立ってんだよ悟れ」
満員バス・届かない暖房・冷たい雪比奈のトリプルパンチで冷え性のあたしはもはや冗談抜きで死にそうなのである。
なに、満員バスって逆に温まるもんじゃないの!!?むしろ暑くなるもんなんじゃないの!!?
それもこれも雪比奈のせいなのだが、まぁこいつはアンデットだし責めきれないところがあたしの甘さ。
「・・・嫌か?」
「嫌に決まってんだろ」
「・・・オレは別に嫌じゃないけど」
「あーそう・・・ん?え?」
「オレは別に嫌じゃない」
何で?
ガラス越しに見える雪比奈とバッチリ目が合った。
曇ってて見えにくいけど、確かに微笑んでいるこいつに、不覚にも心臓が跳ねる。
ありゃあ女子が騒ぐわけだわ。ダメだわイケメンだったわこいつ。
「理由は言ってやらないけど」
「はぁ?なんでよ」
「・・・言わない」
これと決めたことは絶対に遂行するのが雪比奈だ。
どれだけ深追いしても口は割らない、それが分かってるからあたしは諦めてあとの数分間、揺れるバスに身をゆだねる。
「・・・(さっきから、何気に周りから庇われてるし・・・)」
気づけないくらいに誤魔化しながら、周りから庇ってくれる雪比奈に思わず口元がにやけた。気づいてんだよバーカ。
「(雪比奈のこーゆうとこ、嫌いじゃない)」
むしろ・・・
その先は悔しいから、言ってやんない。