今日も暁のアジトは騒がしい。


「デイダラちゃん待てぇぇ!!」
「誰が待つか!うん!てめぇその手に持ってるもんはなんなんだよ!?」
「猫耳カチューシャでっす!」
「ドヤってんじゃねぇ!!!」


もはや恒例行事と化したデイダラと久遠の追いかけっこを視界の隅に捕えながら、オレは一人分のわくをあけて隣に座るサソリを盗み見た。今は傀儡の調教をしている。
が、いつもより苛立っているのかその手元は狂わされてばかりだ。


「・・・なんだよさっきからジロジロと」
「気づいていたのか」
「隠しもしねぇ視線に気づかねーわけねぇだろ」
「ふ、それもそうだ」


盗み見るとはいっても、それほど気配を殺しながら観察していたわけではなかったため、オレの視線はとうにバレていたらしい。
忍たる者、それが当然だとは思うが。


「っだー!!やめろ!!追っかけてくんじゃねぇよ、うん!!」
「ねー一回!!一回でいいから猫耳カチューシャをその黄色い頭に・・・!!」
「そんなことしたらオイラは一生笑い者だ!」
「いいじゃんもとから笑い者な頭してるんだし!!」
「喝っ!!」
「嘘嘘ジョーダンだって、」


静まらないリビングに、とうとうサソリも集中力が切れたのか(もとからそんな集中していなかったが)、傀儡を巻物に戻して苛立ちを隠しもせず大きな音を立てながらテーブルに足をついた。
ここまで機嫌を損ねるとは、大人気ない。仮にもデイダラやオレより一回りは生きているというのに、中身はその外見と同じなのか・・・


「イタチてめぇ今失礼極まりねぇこと考えてなかったか?あ?」
「べつに、なにも」
「・・・チィ」


分かりやすく拗ねてしまったサソリの視線の先は、追わなくてもなんとなくわかる。
仕方ないだろう、ここ最近、芸術コンビは任務ずくめで多忙だった。
ここにいることが当たり前になった今、なにか物足りなさを感じながら帰還した気持ちは分からなくもない。言わずもがな、物足りないのは久遠が傍にいないことだろう。

追い掛け回されながらも満更でもなさそうなデイダラ同様、サソリも素直にはなれないらしい。


「サソリさーんっ!!」


鬼ごっこに疲れたのか、はたまた猫耳カチューシャをはめてくれないデイダラに諦めたのか(おそらく後者だ)、久遠が駆け寄ってサソリの胸にダイブする。
その頭を撫でてやれば、サソリの鋭い視線がオレを射抜いた。邪魔をするな。そう言いたげな赤の瞳に、オレはこみ上げる笑いを押し殺す。
随分と、丸くなったものだ。オレやデイダラもまた然り。


「デイダラがかまってくれないんですぅー」
「オイラがかまうというよりかはお前がかまってきたんだろーが!!」
「デイダラちゃんのバカー!猫耳カチューシャくらいしてくれたっていいじゃんかー」
「イヤだから逃げてんだよ!!」


怒鳴るデイダラの顔は、何故か不満そうにしかめられている。
大方、久遠をサソリに盗られたことが悔しいのだろう。盗られた、というより自分からこちらに来たのだが。


「オイ久遠」
「はい?、わ」
「今話してんのはオレだろうが。こっち向けバカ」


久遠の頬を掴んで無理矢理自分の方を向かせるサソリ。
ふたりの視線がかち合う。そこでやっと、サソリは満足げに微笑んだ。
それは、S級犯罪者とは到底思えない、やわらかい笑みだった。


「やーんイケメンの顔が間近に!!あたし興奮で鼻血がでそうですっ!」


サソリさんならいつでもかもん!ですよー!!
屈託なく笑う久遠につられ、オレも少しだけ笑った。

それからサソリの膝の上でじゃれだしたふたり。デイダラはふくれっ面だ。
オレもあまり、いい気はしない。


「サソリさんの髪の毛ふわふわですねー。女の子みたいっ」
「あ?んなこと言われても嬉しくねぇよ」
「いいなーいいなー羨ましいなー」
「お前も傀儡になれば、それくらい作ってやれるぜ?」
「傀儡はイヤです!サソリさんを感じれなくなっちゃう!」
「・・・・・・・、お前が傀儡になっちまうのは面白くねぇかもな」


さて、そろそろふたりを引き剥がす準備をするとしよう。

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