たまたま、ただなんとなく、本当に気まぐれで来てみたリビングにいたのはあのお騒がせ女じゃなくて憎きうちはイタチだった。
・・・っは、違う。別にオイラはそんな、あいつがいるかなーとか思いながら来たわけじゃねぇ。ただ、そう、アレだ。本当に気まぐれ。

まさかその気まぐれで、イタチに会うはめになるとは思わなかったが。
一方的に恨んでるなんて言われたら、はいそうですしか言えねぇが、とにかくオイラはこいつを好きになれない。
オイラの芸術をモノとも思わないこいつなんか、大嫌いだ。
分かって欲しいとも思わないがな。うん。


「・・・デイダラか」
「だったらなんだよ、うん」


挑発的な言葉を言えば(我ながら子供っぽいとは思った)、イタチは別段気にする事もなく、団子を口に含んだ。
いまさら引き返すのもなんだか癪だ。
イタチと距離を保ちながら向かいのソファーに座れば、長い髪の毛から覗く赤い瞳と一瞬目が合った。

世間話とかそんなことはしねぇオイラ達に訪れるのは、言わずもがな沈黙だ。沈黙のみ。
だがその沈黙を破るのが得意な、ていうかそれしか取り柄がないようなやつがひょっこりとリビングの入り口から顔を覗かせた。
思わず安心してしまったことに内心で舌打ちする。

そんなことは露ほども知らない久遠は、一瞬目を見開いて、次の瞬間には満面の笑みを浮かべてダッシュで駆け寄ってきた。


「なにこの珍光景ーーーーっ!!!」
「う、わっ・・・!」


加減を知らない子供か、と突っ込みたくなるような勢いで腹に突進されたせいで、呻き声が漏れる。
最後の一口を食べ終えたイタチが、小さく首をかしげたのが見えた。

オイラだって同感だ、なんだ珍光景って。うん!
てか退けろ!!


「なになに、なにがあったのデイダラちゃん!イタチ兄さんと一緒にわいわい間食なんて!もしやアハンな展開!?」


BLどんとこーい!!

とりあえず両手を上に上げた無防備なこいつの腹を軽く殴る。
なにがBLだ気色悪ぃ。そんなの死んでもイヤだ。


「・・・なにを勘違いしているかは知らないが・・・いや、知りたくもないが」
「はい、イタチ兄さん!」
「オレが団子を食べているときに、デイダラが物欲しそうな目で向かいに座ってきた、それだけだ」


団子はやらんかったがな、そう言って久遠の頭を撫でるイタチ。
ちょっとまて、うん。
今の言葉には穴があるぞ、なんだ物欲しそうな目って!


「デイダラちゃん可愛いねー」
「頭撫でんなそれと違うオイラは物欲しそうな目で見てなんかねぇ!!」
「嘘をつくな。全ては写輪眼で見切っている」
「おおふ、イタチ兄さんかっくいーっ!!」
「その目はただの飾りか、そうなのか!?うん!!」


依然久遠の頭を撫でながら、イタチの目が少しだけ細められたのが分かった。
和やかさを含んだ瞳に肩で息をしていたオイラは一瞬息を呑む。

例えば、妹に向けるような。例えば、愛しいものを扱うような。
そんな感じの目や仕草で、イタチは久遠を見ていた。


「・・・ふ、冗談だ」


イタチ兄さんが冗談言ったーーっ!?

最初から最後まで騒がしい久遠と、それを静かな目で見るイタチ。
そしてオイラ。

でこぼこで曖昧でぎすぎすした関係の三人が集った、ある昼下がりの出来事。


でこぼこで曖昧な
(意外と心地いい)

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