「・・・久遠チャーン?」
「なに」
「なに、じゃなくて。久遠こそ何なのサ」
もっともな刻の問いかけに軽く舌打ちをすれば、何で!?とこれまたもっともな反応を返された。刻のくせに。
「抱きついてなにが悪いの。あたしたち恋人でしょ?」
「いやそれはそうだケド・・・オレ確か風邪引いた久遠を看病しにきたハズだよネ?」
「うん」
「オレ、もっと涙目で弱々しい久遠を期待してたんだケド」
甘えたな久遠も可愛いからいいけどサー、と満更でもなさそうな刻の肩に顔を埋める。
刻の言う通り絶賛風邪引き中なあたしは、見舞いに来た彼に迷うことなくベッドから飛び起きて(それはもう体調崩した人間じゃない速さで)抱きついたのだ。
そして冒頭に至る。
まぁ、あれだ。
人肌恋しいというかなんというか、それが激しすぎてまさか自分でもこんな行動を起こしちゃうとか思わなかったよHAHAHA。
無意識とか笑えるよね。
ありきたりでベタな展開を期待していた刻を見事に裏切ってしまったあたしは、背中に回ってきた腕に思わず笑みをこぼした。
寂しかったよネーよしよし。
バカにするなと言いたいところだけど、一定のリズムで背中を優しく叩いてくれるのが心地良いから今回は見逃してあげることにした。
「ときー」
「ン?」
「キスしたい」
「・・・ホント、風邪引きの久遠は甘えたサンだわ」
言いながら優しく頬えんで、唇に軽くキスをしてくれる。
なんだかんだで刻が大好きだなぁ。風邪っていつもより素直になれるからいいかも、なんて。
「・・・もっかい」
「コレ以上は駄目。ていうか無理」
「えーなんで」
「オレの制御利かなくなるシ」
その代わりとでも言うように強く抱きしめてきた刻の腕の中で、あたしは笑って目を閉じた。
風邪引きの言い訳
(てか風邪移るよ、とか心配しネェの?)
(だって刻バカだから、大丈夫かなぁって)
(・・・・・・)