春休みもあと少しで終わりを迎えるある日の夕方。
太陽が沈もうとしてることで伸びる影を見ながら、オレと幼馴染みである久遠はふたり並んで歩いていた。
コンビニ帰り、ふたりとも片手にアイスバーを持っている。
オレはレモン味で、久遠はイチゴ味。
そういえば昔っから久遠は甘いものが大好きだったなぁ。
人一人分あいたオレと久遠の距離をもどかしく感じながら、チラリと久遠を盗み見る。
一生懸命って言ったらなんだか食い意地張ってるみたいに聞こえるけど、でもそんな言葉がぴったり似合うくらいにアイスに没頭してる。

世間一般に、久遠は"可愛い"部類に入ると思う。
小さな体、ふわふわの髪の毛、大きな瞳、細い四肢。
鼻が高いよね、こんな可愛い妹みたいな幼馴染みを持てて、なんていつか悠太が言っていた。
本当にそうだと思う。
何度か告白現場にも遭遇した。その度に久遠は若干顔を赤らめながら、でもしっかりとごめんなさいって言うんだ。そして、ありがとうって。

世間一般に"可愛い"部類に容易に入る久遠だけど、オレは違う意味でも"可愛い"って思ってる。
告白現場に遭遇したとき、言い知れない不安が襲ってきて胸がチクチクするのがその証拠。
妹みたいな幼馴染みだけど、オレは久遠の事を"可愛い女の子"として見てるから。


「祐希くん?」
「・・・、ん?」


おっといけない。どうやら見つめすぎたらしい。
視線に気づいた久遠が小さく首をかしげて、これが欲しいの?なんて言いながらイチゴ味のアイスバーを差し出してくる。

間接キスとか気にならないのこの子は。
オレだから良かったけど、すんごく危なっかしいよね。


「じゃあ、もらう。久遠もいる?」
「うん!ありがとう」


アイスバーを交換して、口に含む。
さっきまで食べてたレモン味と甘い甘いイチゴ味が混ざって、なんだか甘酸っぱかった。
決してロマンチストとかじゃないけど、甘酸っぱいオレの恋みたい、なんて柄にもなく思った。

甘酸っぱ、と隣で小さく笑った久遠に、愛しさがこみ上がる。


「・・・、祐希くん?」
「だめ?」
「・・・だめくない」


ほんのりピンクに染まった頬を見て、思わず口元が緩んだ。

久遠は春から、オレ達と同じ穂稀高校の一年生になる。
今から春休み明けが楽しみだ。

夕闇迫る路地、伸びた二人の影は空いた距離を埋めるようにしっかりと手が繋がれていた。


レモンとイチゴ
(僕らの甘酸っぱい恋)

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