ハーフで顔も整ってて、女の子に優しくて芯の通った男。
刻くんに微笑みかけられたらひとたまりもないよねーなんて頬を染めて言う、女の子の気持ちも分からなくもない。

平凡な私だけど、どんな理由があろうとも結局はそんな刻の彼女なのだ。
まぁ刻の性格上、女の子に弱くて甘いのは分かりきってたけど。

・・・けど。


「刻ぃ、デートしなぁい?」
「ンー、無理だナァ」


やんわりと断るならその細いながらも筋肉のついた腕に絡まる、彼女の細っこい腕もほどきやがれ。
そう思ってしまう私は間違ってないはずだ。

さっきから私の視界は刻と、その刻にまとわりつく女子生徒しか映っていない。
クラスメイトもそんな私の禍々しい雰囲気に気が付いているのか、心配そうな声をかけてくれる。
それすらにも曖昧な返事しか返せない私は、相当苛立ってるんだなと他人事のように思った。

あるひとつの単語が頭に浮かぶ。
そんなことあるわけない、だって慣れてるもん。
否定するように頭を振れば、次に目を開けたときには目の前に刻のオッドアイがあった。
びっくりして椅子から落ちそうになったけど、平静を装ってバナナオレを口に含む。
刻と一緒に買いに行ったバナナオレは、すっかりぬるくなってしまっていた。


「・・・なに?」
「別に〜?」


にやける刻のすねを蹴る。
刻は目尻に涙を浮かべて痛ぇヨと悲痛な声を上げた。知るか。


「久遠さっきから目つき悪ぃヨ?」
「だっ・・・!・・・も、元から、です」


誰のせいだよ誰の、と怒鳴りたくなったけどそんなことしたら脳裏に浮かんだ単語を肯定してしまうことになる。それだけは嫌だ。


「さっきの・・・えーっと、名前覚えてネェけど・・・女子と絡んでた時から目つきヤバかったぜ?」


名前を覚えてない。
そのことに、若干の優越感を感じた。


「・・・もしかして、嫉妬?」


弧を描いたままの刻の口。
両頬を思いっきりつねると、悲鳴をあげながら、でも嬉しそうにまた笑った。

ああそうですよ嫉妬ですよ。
嫉妬してなにが悪い!!


開き直った私を未だ嬉しそうな目で見てくる刻が、ふいに手を伸ばして私の頭を撫でた。


「オレがスキなのは、久遠だけだから」
「・・・そうじゃなきゃ困りますから」


こんな可愛くない事しか言えないけど、刻を想う気持ちは誰にも負けない。

軽く触れた唇に、私と刻は顔を見合わせて小さく笑った。


恋愛にはつきものなんです
(嫉妬作戦大成功〜)
(・・・とりあえず殴っていいか?)

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