プスリ。
「痛ぇっ!?」
突然クナイを取り出したかと思えば刃の先をオレの腕にあてがい、戸惑うことなくブッ刺して来たコイツに非難の目を向ける。
久遠は自分がしたことを何一つ悪いと思ってないのか、むしろ何故か不機嫌な顔つきでまたクナイを振り上げた。
おい、そこ心臓!!
「ままま、待てよオイ!ドードー」
「あたしは牛じゃない!」
「分かった、分かってっから止めろ、なっ?不死身でも痛ぇもんは痛ぇ」
久遠の腕を掴んで手からクナイを抜き取れば、諦めたのが頬を膨らまして拗ねた。・・・うぉ、なんだコイツ、可愛いなぁオイ。
人差し指で膨らんだ頬をつつけば、ぷしゅうと空気が抜けたと同時に睨まれた。
その上目遣いは、逆効果だけど。
「なんだよ久遠ちゃんよぉー!またなんかあったのかよ?」
「・・・」
久遠が意味なくオレを傷つけるのは、大抵気にくわないことがあったときだ。
オレはそれを甘んじて受け入れる。Mだと言われても仕方がないとは、まぁ、思う。
だってマジで仕方ねぇんだよ。
コイツにならなにをされても許せる自信があるのだから。
だが決してコイツはSではない。
「・・・なにがあったんだぁ?」
苦い顔をする久遠の頭を撫でながら問いかければ、久遠は頭を撫でるオレの手を取って両手で握りしめてきた。
少し冷たい。
「・・・飛段は化け物じゃないもん」
「・・・っは?」
化け物というキーワードに首を傾げる。化け物?
・・・そーいえば、木ノ葉の賞金首を殺った時、コイツも居たっけか。
久遠は今にも泣き出しそうな顔で続けた。
「死なないけど、痛みだってちゃんと感じるし、心だって持ってるもん」
「久遠、」
「化け物なんかじゃないもん!!」
化け物って言ったほうが化け物なんだもん!バカ!
叫ぶ久遠を腕の中におさめる。
化け物なんて言葉で傷つきはしないし、言われ慣れてもいる。
それはコイツも承知済みだろう。
それでもコイツは、オレが言われた言葉で傷ついたのか。バカなやつ。
「別にオレは平気だっつーの。てかお前が泣いてどーすんだよ」
「っ泣いてないもん!!」
「あーはいはい可愛い可愛い」
飛段を傷つけていいのはあたしだけなんだぁーっ!!
オレの着ている服を握りしめながら、久遠は声を上げて泣いた。
・・・若干引っかかる部分があったけど、なんとなく嬉しいのに変わりはねぇからスルーしといてやる。
君が涙を流すのはいつだって
(オレのためだって分かってっから)