無言なのに腕を離してくれなかった雪比奈をなんとか撒いて(多分虹次が撒かせてくれた)、渋谷荘への帰り道を歩く。

時間はもう、夕方になっていた。
あれ、そんなに長い間雪比奈たちといたのかな。
まあでも嫌いじゃないしむしろ好きだし、なんだかんだ心地いい時間が過ごせたからよしとする。
オレ達に会ったことは他言無用、そう言った虹次の言葉は言われなくても分かってるつもりだ。

・・・人見さん、捜シ者、今日も彼らは元気ですよ。

赤く染まる夕焼けに向かって笑いかければ、さわやかな人見さんの笑顔と静かに笑う捜シ者の笑顔が返ってきた気がした。

と、また背中に何かがぶつかる。


「久遠っ!」
「あ、遊騎」
「どこ行っててん。気ぃついたらおらんし」
「ごめん、ちょっと散歩に。ていうかあの争いに参加する勇気なんかなかったし」
「二番も四番も五番も六番も、にゃんまるも帰ってきてみんなで探してんねんで」


五番なんかカンカンに怒ってたし、抑揚のない声で紡がれた言葉に、冷や汗が背中を伝った。
今日の夕ご飯、私は食べれるのだろうか?
むしろ私が料理されちゃったりしないだろうか。なんだかありえそうな気がする。


「帰ろ」
「うん」


無理矢理握られた手を握り返す。
遊騎は少しだけ笑って、握った手を振り回しながら歩き出した。


「ズリー!オレこっちの手っ」
「わっ、刻っ」
「オレだって探してたもんネ〜」
「四番離せや。久遠はオレのや!」
「ああ、そこにいたのですか久遠・・・遊騎君刻君、今すぐ手を離さないとマイナス―――」
「一億点だ」
「将臣!零まで・・・」
「どーこほっつき歩いてたんだあ?久遠・・・」
「おおおおおお王子・・・!」
「あ!見つけたのだ!会長こっちです!!」
「アン!!」
「いかにも、久遠くん発見!」
「桜小路さん、子犬、会長・・・」


どんどんと集まってくる渋谷荘のメンバーに、自然と笑みがこぼれる。
握られた両手に力を入れて、私はもう一度夕日を見つめた。

彼らにも、こんな温かい日常がある。

職柄状、こんなことを願っても到底無理なのは分かってるけど。
みんなとこうやって平和に過ごせることが嬉しくて、それがいつまでも続いてほしいなんて、つい信じてもない神様にお願いしてしまうのだ。

なにげないひと時が、ずっと続きますように―――

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