コードブレイカーとはすなわち、法で裁くことが出来ない悪を滅す存在しない者。
自分の過去のなにもかもを捨て、各々の目的のために覚悟を決めたその揺ぎ無い意志は、誰にも邪魔をする権利はない。

だがしかしそんなコードブレイカー達にも、こんな平和な一面があったりするのだ。

或る晴れた休日の昼下がり。
洗濯物を干すには丁度いい気温と天気に、王子こと八王子泪は上機嫌で洗濯物を干させていた。大事なことなのでもう一度言おう。干させていた、のである。
決して干しているのではない。干させて「つべこべ言わずにとっととやれ!」

ゴンッと鈍い音が渋谷荘に響く。
頭突きをくらったのは言わずもがな半強制的に洗濯物干しの手伝い(というかほぼやらされてる)をさせられている私である。なんだこれ。私の扱い雑くね?


「てめーにはその姿がお似合いだよ」
「喜んでいいのかわからんわ」
「褒め言葉だ。ありがたく受け取れ・・・」
「分かりましただから頭突きしようと顔を近づけるの止めてくれませんか」


背中にドス黒いオーラを出さないでいただきたい。
泪から視線をそらしつつ残りの洗濯物を物干しに干していく。
すると後ろから突然ドンッと何かが私にぶつかった。え、なに。
咄嗟のことに反応できなかった私は、遊騎!!と叫ぶ王子の言葉を耳にしながら倒れる。
ああ遊騎だったのか道理でなにも気配がなかったわけだ。
配慮なんてしない遊騎が私をかばうなんてことはなく、私は地面とこんにちはをする寸前に手を突いて免れる。


「久遠、遊ぼ」
「いやあの・・・今王子の手伝いやってましてですね・・・」
「えーなにしとるん?」
「え?だから洗濯物干し・・・ってあああ!!?」


遊騎にタックルをくらった私は物干しごと地面に倒れてしまっていた。
洗い立ての洗濯物が、茶色い土をかぶっている。
これは、かなりまずいのではなかろうか。
振り返らなくてもわかる、後ろから感じるドス黒いオーラ。


「遊騎」
「なん?」
「私を担いで音速で逃げて。早くしないと殺される」
「誰にや?」
「いいから早く!にゃんまるのぬいぐるみあげるから!!」
「えーいやや。オレが好きなにゃんまるはオレが好きな久遠にあげたいねん。どーせもらうならチューがええ」
「わかったなんでもするから早くうううううううう!!」
「了解やし」


お腹に回された手。景色が一瞬で庭からリビングに変わった。
ふう、なんとか回避できた。
庭から聞こえる王子の怒鳴り声に思わず身震いする。殺されなくてよかった。
お礼を言おうと遊騎を振り返れば、どこか期待に満ちた眼差しで私を見つめている。


「オレ音速やったったで」
「あーうん、ありがとう(遊騎のせいなんだけどね)」
「ご褒美は?」
「はいはい」


遊騎の前髪をかきあげて額に口付ければ、遊騎は不満そうに唇を尖らした。
え、なんでだ。


「嫌や!!ここがいい」


拗ねた遊騎が指さしたのは遊騎自身の唇。・・・いやさすがにそれは・・・私にはもったいなさすぎるっていうか遊騎絶対意味分かってないよね・・・
ためらう私の肩を掴んで、遊騎がなんのためらいもなく顔を近づけてくる。
え。ちょ。


「ダメ〜」


また突然後ろから引っ張られて、嗅ぎなれた匂いが鼻腔を掠めた。
なんの香水かは知らないけど、とても安心する香り。


「なんや四番。邪魔せんとってや」
「するヨ。それはいくら遊騎でもダメ」


背後から刻の腕が回ってきて、私の体を抱きしめた。
久遠無防備すぎなんて注意されてもなんのことか分からない私は、ただ首をかしげる。
すると、リビングの戸口で盛大なため息をつく音が聞こえた。


「六番もおってん。まあ聞こえとったけど」
「え、ていうか今私ため息つかれたよね」
「あなたは馬鹿ですか。それとも馬鹿なんですか」
「それ結局馬鹿じゃん!!?」
「だって久遠鈍すぎなんだモン」


ろくばーん、と大神大好きな遊騎は零のもとに走る。
零は困ったように笑って、またため息をついて、それから私に腕を回して抱きついている刻を睨んだ。


「刻。久遠を離せ」
「離せ言われて離すヤツがいるかヨ」
「・・・そうか。だったら力づくで」
「いや待て、待ちなさいふたりとも。何かがおかしい」


なんでいきなり喧嘩なんか始めるのわけ。
しかもなんか私を賭けた戦い、みたいな、そんなことあるわけないけども。
なんだこの一触即発な雰囲気・・・!


「トップ☆シークレットです」


また厄介なのが来た。
刻の腕の中で思わず身を硬くした私に妖艶な(ていうかただにやついてるだけ)笑みを投げかけた将臣は口元に人差し指を立て、意味不明な英単語を並べる。


「これは男同士の問題・・・久遠は気にしなくて結構です。そして刻君はマイナス一万点」
「何でだヨ!!?」
「嫌ならばすみやかにその腕を解きなさい。さもなくばマイナス二万点」
「きっついお仕置きやし」
「フン、当然の報いだ」


なんだかみなさんが黒いです。

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