彼は一尾の人柱力だった。
いつもどこか冷めたような、でもとても悲しそうな翡翠色の目と赤い髪、大きなひょうたんが特徴的な男の子だった。
みんなから蔑まれ忌み嫌われていた。
彼は我愛羅といった。我を愛する修羅だといった。
彼は存在意義を探し求めていた。それは他者を殺すことにあると結論付けた。
殺して、殺して、殺して殺して殺して殺して殺した。彼は幾度も他人の血で赤く染まった。

そんな彼は、私の知らない間に風影になっていた。
他者を殺すことでしか生を感じることができなかった我愛羅が、正反対の職柄に就いた。
ずっと一緒にいた私でさえ、少しだけ驚いた。
でも私は、我愛羅がよかれと思ってすることならなんでもよかった。
ただ傍に居れるだけでよかった。

今日も我愛羅は忙しい。


「疲れる?」
「いや」


何度も繰り返したこの会話。
我愛羅の顔に少しだけ影が差した時は、私がこうやって肩を貸してあげるのだ。
数秒私の肩に顔をうずめてから、私は先ほどの問いを投げかける。
すると我愛羅の顔にもう影はなくて、先ほどの問いの答えを返すのだ。
そしてまたなにか文字がびっしりと書かれた資料に目を通す。
私はというと、我愛羅の近くから離れてソファに座って彼を眺める。

少し離れただけなのに、私の周りには常に砂が舞っている。
生活に支障が出ない程度の、少量の砂。
言わずもがなそれは我愛羅のもの。

いつからか、私は我愛羅のそばにいて、そして私の周りに砂が舞っていることが自然だった。
幼い頃から一緒にいた。我愛羅が心を閉ざしても、何度罪を重ねても、その砂が私を殺すことはなかった。
それどころか砂は私を守るように、いつ何時も私の周りを舞っていた。

また、我愛羅がひそかに顔をしかめた。
私は静かにその場を立って彼のもとに小走りで走る。
我愛羅はそんな私を見て、すまないと少し笑って言ってから私を引き寄せた。
肩に少しの重みがかかる。我愛羅の髪の毛が少しくすぐったい。
でも、決して嫌じゃなかった。むしろ弱いところを見せてくれる我愛羅が、愛しくてたまらないんだ。


「・・・がんばれ、がんばれ、我愛羅」
「ああ」
「いつでもいるからね」
「・・・ああ」


今回は長いな、嬉しいけど。
そっと我愛羅の髪の毛を撫でれば、ピクリとすこしだけ動いたけどすぐにおとなしくなった。
私の周りを舞う砂は、オートじゃないぶん少しずつだけどチャクラは減っていく。
それでも我愛羅は常に砂を飛ばす。
いつでも私を守ってくれる。

だから私は、私にできることを我愛羅にしたいんだ。


「もうちょっとだね」
「ああ」


我愛羅は短く返事して、一瞬私を抱きしめる腕の力を強めた。
そして私の体を離して、またすまないと笑った。


「我愛羅はね、もう、みんなのヒーローになっちゃったけどね」
「・・・?」
「今までも、これからも、私のヒーローでいてね」
「当たり前だ」


即答。
なにからも守ってやると言うように舞う砂に笑みがこぼれた。

がんばれ、我愛羅。
私達のヒーロー。


君は永遠のヒーロー
(私だけのヒーローであってなんてわがまま、言わないから)

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