「ほんとに私の家でいいわけ?なんの色気もないよ?期待しないでよ?マジで」
「久遠、念押しすぎだヨ」


久遠の家がいいんだし、色気とか関係ねぇし、別になにを望んでるわけでもねぇヨ。

久遠の目を見て告げれば、なにが不満なのか眉根を寄せたまま渋々と言った様子で頷いた。
放課後、週に一回のペースでデートというものをしているオレ達。
今までいろんなところに行った。
ショッピングセンター、図書館、ゲームセンターや喫茶店。
あるいはそのまま学校に留まったり。

今日はどこにする?

当たり前のように聞いてきた久遠に、オレは抱きつきながら言ったのだ。

久遠の家がイイ。


「ただいまー」
「お邪魔しマス」


玄関に入ると、久遠の匂いが鼻腔をかすめる。
ああ、本当に来たんだなぁと今さら感じた。
変に心臓が高なる。バレないように自然に視線を飾ってある花に向けた。


「おかえ、・・・・・・り・・・・・?」
「ただいまお母さん。刻だよ」
「初めまして」
「まぁ・・・まぁまぁまぁまぁー・・・!」


ビューティフル!
叫びながら抱きつく勢いで手を両手で掴まれる。そのあまりにもな勢いに若干身を引いて久遠を見れば、乾いた笑みを浮かべた。


「こっち」
「あ、じゃあお母様、また後で」
「ふふ、楽しんでねぇ?」


笑った顔が久遠にそっくりだった。イヤ、久遠が似たのか。

面白いお母様だネと手を繋ぎながら階段を上る。
その手を払いのけて、久遠はそう?とまた少し笑った。・・・この笑顔に免じて、手を払われたことには触れないことにしよう。決して後が怖いからなどというわけではない。決して。

部屋のドアを開ければ、淡い水色に統一されたシンプルな風景が目前に広がる。
飾らないけど整った部屋がなんだか彼女らしい。


「適当に座っていいよ」
「じゃあ久遠、オレの膝の上に」
「いかないから」
「チッ」
「そこ、舌打ちしない」


ハイハイと肩をすくめれば、ハイは一回とお決まりのツッコミをいただいた。ごちそうさま。


「で、私の家でなにするの?」
「え?ナニってそりゃあ・・・あんなコトやこんな、」
「ああわかった黙れもういいそれから今すぐ帰れ五秒後に」
「ヒドッ!冗談だヨ冗談!」


あながち冗談でもなかった(コードブレイカーと云えど中身は立派で健全な男の子だシ?)言葉を慌てて訂正すれば、久遠は怪訝そうな目を向けたまま三つ編みをほどいた。

見た目が違うだけで、それだけでこんなにも鼓動が高なる。
オレも彼女にゾッコン、なのだろう。それはもう、本当は壊してしまいたいくらいに。
でも、それよりも彼女が大切だから。


「・・・久遠チャーン」


呼び掛ければめんどくさそうに、でもちゃんと返事をしてくれる久遠の背後から腕を回す。
付き合う前から頻繁にしていたハグだけど、やっぱりいつもとなにか違った。オレのはじめては、いつだって久遠だ。


「久遠もそうだったらいいナー、なんて」
「はぁ?なにが?」
「なんでもねぇヨ」
「・・・? なにそれ」


オレは久遠の肩に顔を埋める。
シャンプーの香りがした。


「久遠、大好き」


呟いた言葉に、久遠はわずかに笑ってくすぐったいよとオレの頭を撫でた。

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