ドダダダダッ
盛大な地鳴りのような音がアジト内に響き渡る。
ソファーに座っていたイタチさんが首を動かし、視線をリビングのドアに向けた。私もそれにならい、元凶であろう人物を待つ。
バンッ、と大きな音をたて、想像通りというかなんというか・・・寝巻きの久遠がリビングに顔を出した。
もう少し静かにしてくれないものか、鮫肌で削ろうにもあの少女には牙を剥きたがらないのだ。
肩で荒い息をしながら、それでも久遠はキラキラと目を輝かせ、私の向にいるイタチさんに駆け寄った。
「イタチ兄さんっ!おかえりなさーい!」
そのままの勢いでイタチさんの首に腕を回し、これでもかというくらいに抱きついている。
そう、私とイタチさんはリーダーからの命令で長期任務に出向いていたのだ。
たった一週間だが、この少女にとっては苦難の一週間だったと聞く。・・・これは、リーダー情報だ。
「久遠、痛い」
「ああもう会いたくて会いたくて我慢できませんでしたよイタチ兄さーんっ!」
「・・・一応、私もいるんですがねぇ」
静かにツッコミを入れると、久遠は鋭い眼光で邪魔しないでと言ってきた。
相変わらずいちいち癪にさわる少女だ。
「もー毎日毎日イタチ兄さんがいない日をどう過ごそうかずーっと考えてたんですよ!」
「そうか」
「それで、考えついたんです!目を閉じて、イタチ兄さんがそこにいると思いながら想像を働かせてイチャコラしてました!」
「それはただの妄想だ」
イタチさんのもっともなツッコミは完全スルーで、久遠は嬉しそうに笑いながらイタチさんの腕にすりよる。よっぽどだったのか、解放しなさそうな雰囲気に私はため息をついた。
「妄想で終わらせませんよ!イタチ兄さん、あたしとイチャコラしましょう!」
「・・・遠慮しておく」
あっさり妄想と認めている。この少女には、プライドというものがないのか。
「恋人ごっこしましょうよお〜!」
「お前はごっこで済まさないだろう」
「もくろみがバレてるっ・・・!」
なら話は早いですねと満面の笑みで言いながら、久遠はイタチさんに抱きつく力を強めた。少し哀れだ。
助けろという視線が来ている気がするが、こんなに困惑するイタチさんを見れるのは今後一生ないだろう、ということで手助けはしない。
そもそも、嫌なら引き剥がせばいいだけのことで、それをしないというのはイタチさんが心から嫌がってない証拠で。
「イタチ兄さん愛してますっ!」
「・・・ああ、」
屈託のない笑顔を向けられ、少し口角を上げて答えるイタチさんも彼女のことは嫌いではないのだ。
まったく、とんだ平和ボケにずいぶんと感化されたものだ。
その事実が満更でもないのは、きっと私だけではない。