「マダラ」
「・・・はい?」


マダラ自身から発せられた「マダラ」という言葉に、あたしはただ眉をひそめた。
ブサイクが増すぞと静かにペインに言われる。滅びればいいと思う。

今日もいきなりトビ口調であたしの前に現れたかと思いきや、腰に手を回され、一言走りますよーなんて邪気のかたまりな笑顔(見えないけど)を向けられて声も出ないまま気づいたらリーダーがいる塔まで来てた。
マジでなんだこれ。


「この紙が落ちていた」
「・・・ん?うわ、汚い字!!」


というか、汚い紙というか・・・
マダラの手にあるひとつの紙切れは、不細工な字で確かに「マダラ」と書かれている。
なるほど、それであたしだと疑ったマダラはあたしを誘拐してこんなところに、ね。
いくらあたしでもこんな汚い字は書きません。


「人違いです」
「・・・なら、なんだこの紙切れは」
「知るか」


比較的静かな会話を交わす。
これがサソリさんやイタチ兄さんだったら、興奮してそれどころじゃないんだけどなー。
窓の外を見ながら今まであたしとマダラの会話を聞いていたペインが、呟く。


「マダラのことをどう思っている」
「んあ?」


その言葉が少し意外で、間の抜けた声が口から漏れた。
マダラのことを、どう思っている?なにこれ修羅場ですか?
あたしを賭けた恋愛戦争が始まっちゃうとかそんなんですか?


「・・・お前は馬鹿か」


隣に座っていたマダラに額を叩かれる。
そんなこと天地がひっくり返ってもありえないとぼやくマダラにむかついて殴ろうと手を上げれば、お見通しなのか上げた手を掴んで床におろした。
くそオヤジが。


「ていうかペーさんなんでいきなりそんなこと聞くの?」
「その呼び方は止めろ」


ペインの傍で小南が少し笑った。綺麗。


「・・・なんとなくだ。マダラは普通恐怖されおののかれる存在だろう」
「えー怖くないしーいこんな能面ヤロー」


今度は少し声を出して小南が笑った。
この笑顔が戦いを前にすると凛々しくなるんだからギャップに萌える。


「そうか、そんなに死にたいのか久遠」
「いいえ全然そんな急いでないです間に合ってます」


クナイを取り出したマダラに若干焦りながら、あたしはペインの背後に回った。
逃げ足だけはゴキブリ並みだなと小南が呟く。ほっといてください、その比喩はちょっと悲しいですよ小南姉さん。

夕日が雲にさしかかる。
ペインが両手をあげれば、次第に空全体を雲が覆った。

雨が降り出す。今日はもうお開きだ。

座ったままのマダラの背後に回り、あたしは無言で背中に抱きついた。
同時にマダラが立ち上がる。


「また来い、久遠」
「うん!来るときは雨降らせないでよ、長門」
「ああ」


じゃあばいばい、と手を降った時にはもうペインたちがいる塔が遠ざかっていた。
ぱしゃぱしゃと地面を蹴るたびに、雫がはねる音がする。

漫画を読んでる限りマダラは好きになれなかったけど、今こうやって懲りずにおぶってリーダーがいるところに連れて行ってくれる(今日はマダラの都合だったけど)彼が、普通に好きだったりする。

マダラは少し悲しくて、根は優しい人だと思う。


「マダラ」
「なんだ」
「寝る。おやすみ」
「、おい」


マダラの背中に頭を預けて目を閉じる。
はぁ、とマダラがため息をついたのがわかった。
意識がまどろみに沈んでいく。あたしは抗うことなく、そのまま眠りに落ちた。

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