今日はバレンタインデー。
恋人、なんて呼ぶにはなんとなく気が引けるけど、私には大好き(?)な人がいる。
・・・いや、うん。
ちょっと、ていうかかなり変態なわけだけど。
「久遠」
「・・・っ、!」
ああほら、来た。
気配を殺して後ろに立ってたのか、いきなり耳元で囁かれたら誰だってびっくりするでしょう、するはず。
肩をびくりと揺らしたのが自分でも分かった、平家はそんな私の反応が面白いのか、クスクスと静かに笑う。
こっちの気も知らないで。
「なに?平家」
「今日が何の日か知っていますか?もちろん知ってますよね?」
「・・・さあ?何の日だっけ?」
なんだか嫌な予感がするから、わざと知らないふりをしてとぼけてみる。
すると平家はそんな私の態度が気に食わなかったのか、強引に振り向かされた。
でも顔は笑ったままで、私は引きつった笑みを見せた。
「・・・悪い子だ。私に嘘をつくなんて」
「へいっ・・・!」
弁解をしようにも遅すぎた。
気づいたら平家の顔が目の前にあって、ぴったりと唇はふさがれている。
言い訳しようと口を開けば待ってましたとばかりに侵入してくる平家の舌。
いつの間にか腰と頭に大きな手が回っていて、抵抗を許してくれない。
男子特有の力強さと、平家の艶かしい舌使いに私の脳内は早くも根を上げてしまう。
「んっ、・・・へ、いけっ・・・!」
「は、」
甘い。
何度も何度も角度を変えてキスされる。
なにも考えられなくなって、しまいには腰がくだけてしまう。
予想通り膝の力が抜けて立っていられなくなった私をいとも簡単に受け止めて、仕上げとでも言うように平家はリップ音を立てて唇を離した。
「も、いきっ、なり、なにするの・・・!」
「おや、いきなりとは心外ですね。私に嘘をついたお仕置きです」
「ド変態め・・・!」
「どうやら久遠はまだお仕置きが足りないみたいですね?」
「十分すぎるくらい足りてます」
息一つ乱してない、ムカつく。
にやりと笑う平家を睨めば、おかしそうに目を細めてまた頬にキスしてきた。
「チョコはいりません」
「じゃあ最初っから何の日か、とか聞かないでよ」
「そのかわり、久遠をいただきます」
「さてと、ガトーショコラでも作ろうかな」
逃げようとキッチンに足を運びかけたところで、手首をつかまれる。
振り向きざまに唇に軽くキスされて、
「逃がしませんよ」
ああ、
なによりも甘いもの
(もう逃げられない)