一目惚れをしてしまった。

一目惚れなんて、いつもされてる側だからこの気持ちをどうしたらいいのか分からなくて、戸惑った。
オレはコードブレイカーだし、恋愛なんてしても意味を成さないことくらいは知ってる。
それでも話してみたかったりするから、いつもの軽い調子で話しかけてみようと試みるが彼女を目の前にするとなんの言葉も出てこなかった。

彼女は、とあるコンビニでバイトをしていた。
めちゃくちゃ小さくて童顔だから、すごく制服が似合わなかった。

話しかけれないと分かっていながらも、今日もバイトを終えてあのコンビニに向かう。
オレも堕ちたもんだナ、たかだか女ひとりのためにコンビニに足を運ぶなんてコードブレイカーの名折れだ。
こんなの大神に知られたらそれこそ終わりだな。

さて、今日はなにを買おうか。


「いらっしゃいませー」


いた。
いつも一番にいらっしゃいませを言うのは彼女だ。

にこにこと笑いながら会釈する。
オレは慌てて会釈を返した。
・・・覚えてくれてるのか?

少し舞い上がってしまう心中に調子に乗るなと叱咤する。
ほんとはスゲー嬉しい。


お菓子コーナーを眺めながら、あることに気がついた。

・・・バレンタイン特集?
あ、今日バレンタインデー・・・

もうそんな時期になるのか、時の流れの早さを感じる。
彼女は誰かにあげたのか?
まぁあげるよナ、あんな可愛かったら彼氏のひとりやふたり・・・、

ちら、と目線をやれば、ばっちり目が合った、合った!?

彼女は少し笑って、カウンターから出てこっちに向かってくる。


「こんばんは!」
「・・・お、オウ」


間近にいる彼女は、遠目で見た彼女よりも小さく感じた。


「いつもいらっしゃってますよね?わたし、あなたが来られるときいつもシフト入ってて」
「あー、はぁ、まぁ・・・」


だって君いない時にはこんなコンビニ用無しだシ。
なんて言えねーけど。


「誰かにチョコ、差し上げるんですか?」
「んなワケねーダロ?ま、もらえるんだったらいくらでももらうケド」
「あはは、そうですよねー!あなた、かっこいいですしたくさん貰いましたか?」
「んー・・・まぁ、ざっと100個くらいはネ」
「マジですか!すごい!」


コロコロ変わる表情。
オレを見てる目。
嬉しくて嬉しくて、ついにやけてしまう頬。


「モテモテですね!じゃあわたしもチョコあげますね!101個目!」
「エ、マジで?」
「マジでーす、はい!」


小さなチロルチョコが手の中で転がる。
昼間もらったどのチョコよりも、特別なもの。


「・・・アリガト」
「またいらしてくださいね!」
「絶対来るヨ」


では、とカウンターに戻ろうとする彼女の手を取る。
彼女は不思議そうに首を傾げた。


「えっと、名前聞いてもイイ?」
「あ、久遠です!あなたは?」
「オレは刻。刻むと書いて刻だヨ。・・・ホワイトデーたのしみにしてて」
「・・・!はいっ!」


彼女・・・久遠は笑顔で嬉しそうにうなずいた。



きっかけはコンビニで
(そう、ただのきっかけにすぎない)

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