10歳以上歳の離れた恋人がいる、と言ったら必ずみんな驚いた顔をして止めときなよ、なんて苦い顔をする。

恋は盲目だよ、なんてそのつど言い返すけど、実際恋は盲目だと思う。

これがわたしの恋人だよ、なんて紹介しても、誰もが口をそろえて浮気!?と叫ぶ。
いやいや、この人これでも20代後半なんだよ。
ただ顔が不自然なくらい童顔なだけでさ。


そして今日はバレンタインデーだ。


「久遠は渡すんでしょ?あきらさんに」


なにも包み隠さず自分のことは話すため、わたしとあきらさんの仲は公認だ。
バレンタインのレシピが載った雑誌を眺めながら、わたしは曖昧にうなずいた。


「でも、苦いのにするべきか甘いのにするべきか迷うんだよね」
「え、なんで?本命は苦いほうがいいんでしょ?」
「んー、でもあきらさん・・・あの顔の通り甘いもの大好きだし」
「味覚まで子供なんだ・・・」
「そーゆうことです」


こういうのは、あきらさんの親友(?)の東先生に聞くべきかな。

東先生が仲良しだってあきらさんに聞いたときは、酷く驚いたものだ。
だってだって、わたしが通う高校の先生なんだもの。
東先生もめちゃくちゃ驚いた顔してたっけなぁ・・・
うん、懐かしいね。


「職員室行ってくる」


わたしはバレンタインのレシピを片手に教室を出た。


***


職員室の扉を開けた途端、目に入ってきた光景に呆れてしまった。
いやほんとに。
もう何回目なんだろう、無邪気(?)な笑みであきらさんが東先生をからかっていた。
ほんとに成長しないよね、あきらさん。

ここで見つかるとやっかいだなー、よし出直そう、


「あ、久遠だ〜」
「、」


見つかった、あっさり見つかって抱きつかれた離れてください。


「久遠職員室に呼び出されたの?いけない子だ!」
「あきらさんに言われたくないよ。もう、東先生なんでいるんですかこの人」
「あ、ひっどーい!久遠に会えると思って来たのに!」
「あはは・・・」


困ったように笑う東先生。
ちなみにわたし達は先生の間でも公認のカップルだ。
それがいいことなのか悪いことなのか、誰もなにも注意せずにスルーだ。悪いことだ。


「こいつになに言っても聞かないよ」
「よく分かってるじゃないこーちゃん!」
「分かりたくないけどね」
「・・・あきらさんみたいな子供持っちゃって、東先生も大変なんですね」
「親じゃないけどね」「子供じゃないもん!」


もういいや、あきらさんいるしここは直接聞こう。
わたしは未だ背後から抱きついているあきらさんの腕を握りながら聞いた。


「あきらさん、バレンタインデーは苦いチョコと甘いチョコ、どっちがいい?」
「え?んー・・・」


珍しく考え込むあきらさん。
あれ、甘いチョコって即答するかと思ったのにぐぇぇぇぇえ!
ちょ、苦しい苦しいあきらさん!


「あきらさんくるし、」
「あまいあまーい久遠が一番ほしい!!」


顔面まっかっかになって、職員室を出て行ったのは言うまでもない。



欲しいのは君
(あきらさんにはもうなにもあげない)
(怒んないでよー)

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