こんなにたくさんのチョコをもらっても、好きなやつからもらえなかったら意味がない。
オレを取り囲む女子たちに笑ながら、思った。
ったく、なんだよあの子いねーじゃねぇか。
あの子からもらえなかったら意味がねぇ。
いつもおどおどしてて、でも気づいたらオレのこと見てて、その瞳は自信なさげで・・・
無遠慮にベタベタしてくる他の女子とは違うあの子。
「刻ぃ、あたしのやついっちばん最初に食べてね?」
「なに言ってんのよ、うちのやつ一番に食べてよ刻!」
はいはいと適当な相づちを打ってその場を後にする。
あの子はチョコ、くれねーのかな。
結構オレ、期待しちゃったりしてんだけど。
「確か・・・5組だっけナ」
チョコの袋を担ぎ直して5組の前を通る。
・・・いた。
目が良いオレは、すぐにあの子を見つけ出せた。
手元には、綺麗にラッピングされた小包。
なんだ、あるじゃネェか。
少し緩む口元を隠しながら、ゆっくりゆっくり歩く。
あの子が、追いつけるように。
足音がして、オレはゆっくり振り返って手を差し出した。
視線の先には、
愛しの君。
(す、す、好きですっ・・・!)
(待ちくたびれたヨ)