サンタさんが廊下を歩いてく。
時期外れの、サンタさん。
彼、刻くんは私の想い人です。
今日はバレンタインデー。
すっごく人気があって女の子にモテモテな刻くんは、いっぱいもらったチョコを大きな袋に詰めて自慢気に廊下を歩いてる。
そういう若干なナルシストなところも好きだから、これは完璧に惚れた弱みってやつです、はい。
そんな私はというと・・・
「ちょっと久遠、今廊下通ったじゃない!渡さないのー?」
「め、め、迷惑だよ呼び止めたりしたら!」
「そんなこと言ってたら一生渡せないよ?」
「・・・う」
わりと綺麗にラッピングできた手元のチョコクッキーを見る。
今年こそは、渡すだけでもして私の存在を知ってもらおうとしたんだけど(話したことないから)、やっぱり私には勇気がない。
だってやっぱり、告白するのと同じだし・・・
いきなり知らないやつに渡されても誰?ってなるだろうし・・・
「だーから久遠はいつまでたっても進展ないの!」
「し、進展とか望んでないよ!あ、あつかましいよきっと!・・・私は、見てるだけで・・・、」
「じゃあその手元のチョコはなに?」
「・・・、う」
痛いところを突かれた。
口ではそう言ってみても、やっぱり私は刻くんにもっと近づきたい。
でも、自信はもちろん勇気もないわけで。
「行動あるのみだよ」
後悔してもいーの?
「・・・わ、私・・・行ってみるね」
「行ってらっしゃい!」
背中を押されて教室を出る。
待っててください、今あなたに渡しに行くから。
この気持ちとともに...
視線の先には、
(自慢気に笑って手を差し出した彼の姿、)