言葉で言い表すなら、そう・・・
アレが本当の綺麗だというのだろう。

今まで生きてきたなかで、全てをひっくるめても一番だといえるほど、それは美しくそこに立っていた。

白くて綺麗な肌、長いまつげに大きくて吸い込まれそうな黒の瞳、細い手足、艶のある長い黒髪。

目をそらすことができなかった。

それほどまでに魅力的で、オレの心臓はドクドクと音を立てて鳴り止まない。

なによりも魅力的だったのが、死への恐怖を知っている、そんな瞳だった。

彼女はオレと同じような、なんらかの理由があるのだろうか。

上忍になった今でも、オレは死への恐怖がある。


ふいに、目があった。


「・・・っ、!」


うるさいくらいに心臓が音をたてる。
痛くて苦しくて、オレは思わず心臓付近の服を握った。


「だいじょうぶ、ですか?」


その瞳同様、透き通るような儚さを含んだ声だった。

ああ、これはなんなのだろう。


「・・・、ああ」
「あなたが日向ネジ、様?」
「そんな呼び方はしなくても、ネジでいい」
「ネジ・・・?」
「それで、いい」


こんなにも綺麗なのに、彼女もまた、幾度も幾度も舞う鮮血を見てきたのか。

わかっている、忍とはそういう世界だ。

なんて皮肉なのだろう。


「皮肉、ですね」
「・・・え、」


オレが考えていたことをそのまま言われて、戸惑う。
彼女のきめ細かい髪の毛が、風にもてあそばれた。


「貴方のような、端正で綺麗な瞳を持った方が、この忍の世界で燃えるような汚い赤を記憶しながら死んでゆくなんて」


もったいないです、そう悲しげに笑う彼女は、きっと忍の世界が嫌いなのだろう。

それでもこれは、オレの選んだ道だ。
オレの運命はオレが変えていく。死になどしない。


「この任務、共に行動させていただきます、久遠と申します」
「久遠、か」
「はい。よろしくお願いいたします」
「・・・ああ」


どんなに穢れた世界でも、久遠にとって嫌いな世界でも、オレは久遠に出会えた。
それだけで、オレの世界は彩りを見せたような気がする。


「でも、不思議です」
「なにがだ?」
「ネジ、貴方に出会えたその事実が、私の世界に彩りを見せた。忍も捨てたものじゃないですね」


そう言って微笑んだ久遠の頬は、鮮やかな桃色だった。


桃色の世界で
(きっと、オレの頬も)

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