「「え」」
廊下でばったり会った飛段とあたしは、お互い何かをとっさに後ろにやった。
やぶぇ、バレた?
冷や汗タラリなあたしに対し、飛段もどこか落ち着かない様子であたしを見ている。
双方が、ニヤリとひきつった笑みを浮かべた。
「よっ、よお!奇遇だな久遠!」
「ほぉほほホント!どったの飛段くんや」
「おおオレはアレだ、ちょいリビングに用事がだなぁ」
「えええあたしもなんだけど」
やばい。これは非常にやばい。
飛段にバレたらサプライズどころじゃない、って、え?
なんのサプライズかって?
決まってる。だって今日は飛段の誕生日なんだから!
今あたしの背に庇ってるモノは、小さなショートケーキだけど・・・
まぁ冷蔵庫にあるチョコホイップでちょちょいとなにか綴れば、少しは重みのあるものになるだろう・・・という勝手な解釈ですが。
うん、でも、その過程を見られるのは非常によろしくないわけで。
「ひ、飛段のって絶対死んでも今すぐやんなきゃ駄目なの?」
「んぁ?あー・・・、おう。オレは早く渡してぇかんな」
「へ、へぇー」
「そーゆお前は?どーなんだぁ?」
「あ、あたしもできれば早くがいいかなー・・・」
でないと腐る!
というのか心のうちに留めておいた。
うーなんだか手がベトベトになってきた・・・!
お互い譲らない空気が流れてる。
・・・仕方ない、チョコホイップうんぬんは抜きで美味しくなくなったら意味ないし・・・きっと市販のだから美味しいはずだし、今渡しちゃおう!
手間がはぶけゲフン!
本音カモフラージュ。
「あ、飛段」「久遠」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「さ、きに言っていいよ」
「や、おめーが先に言えばいいぜぇ?」
「ん、飛段が」
「久遠が」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
キリがねぇえ!
いや、もう、いいや!あたし言っちゃうよ?久遠ちゃん先越すからね?
あたしは後ろに隠していたショートケーキを前に差し出して叫んだ。
「「誕生日おめでとう!!!」」
・・・あれ?
自分のことは後回し
(あ、そういえばあたし今日誕生日だったんだ・・・)
(・・・オレもじゃねーか・・・)