頭脳明晰。冷静沈着。
頭のいい彼なら、あたしの気持ちなんかとっくに分かってると思った。
「ねぇほんとに分かんないのー?」
「・・・だから、さっきからなんのこと言ってんだよお前は!オレになにを分かって欲しいんだ」
「シカマルって馬鹿だよね」
「お前だけには言われたくなかった」
アイキュー200以上の天才児が、聞いて呆れるねと団子を頬張ったら、痛いくらいの視線に射抜かれる。
はいはいどうせ、お前のほうがわけかんねぇよとか言いたいんでしょ分かりますー。
ほらあたし頭いいじゃん。シカマルの言いたいこと分かったじゃん。
「そりゃ誰でもわかるだろ」
「うるさい黙れその口縫ってやろうか」
「・・・、オレそこまで言われるいわれはねぇだろーがよ」
めんどくせぇ。
お決まりの言葉を口にして、シカマルは皿の上にあった三色団子を手に取った。
口に入れようとしたところで、すかさず奪って自分の口に運べば、最初はなにが起こったのかわからないようなマヌケな顔をして次第に事を理解したのかその目はだんだんと鋭利に細められた。
そんなタレ目に睨まれても怖くもなんともありませーん、だ。
「お前、ほんっっっっとめんどくせぇ女だな」
「ふっ、そんな褒めてもなにもでないよ?」
「褒めてねぇよああもうまじでめんどくせぇ」
シカマルはあたしのコトが嫌いだと思う。
でも、あたしはめんどくせぇと言いながら何でも難なくこなしてしまう、そんなシカマルが小さい頃から大好きだった。惚れた弱み、ってやつなのかもしれないけど、今のなにげない仕草にだってこんなにも胸がドキドキするんだ。ああもう。
なんであたしはこんなに可愛くないんだろう。
自分の口からじゃとても言えない、言っても届かないこの想いを、その頭脳明晰な頭でくみ取って理解だけでもしてくれたらいいのに。
「シカマル」
「あんだよ」
本当にめんどくさそうな顔で頬杖をつくその仕草も、大好きなんだよ。
あと一個だけ残った団子を手にとって、無理矢理シカマルの口に詰め込む。
これでもかというくらいに目を見開いてこっちを見てきた彼にニカッと笑ってみせた。
「ごめんね、これでチャラにして」
「・・・しょうがねぇな」
「じゃあ、シカマルのおごりで!」
「おい全然チャラになってねぇよ」
そう言いながら財布を取り出すシカマル。
ああ、シカマルだ、なんてわけも分からないことを思った。
シカマルはあたしが嫌い。あたしはシカマルが好き。
好かれたいけど、あたしはいつもその逆の行動を取ってしまう。
寛大な心を持ったシカマルに甘えてしまう。でもそんな関係が心地いいあたしがいる。
なんだか変な気分だ。
「シカマル」
「今度はなんだよ。もうどこにも付き合わねぇぞ」
「知ってるよバーカ」
嫌いでも、そばに居させてくれるシカマルが大好き。
そう言えたらいいんだけど、今はまだあたしには勇気なんてないから。
だからせめて、もう少しだけ。
そのシカマルの優しいとこに甘えさせてね。
私を嫌いな君が好き
(どんなに願っても、嫌われてても)