小さい頃から、わたしはこの赤い瞳がコンプレックスだった。

赤と言えば?と聞かれて真っ先に思いつくのは鮮血。
血の赤。赤い瞳をもって生まれたわたしは、忌み子として人々に虐げられてきた。
わたしの所属する一族は水遁を得意とする。
それにちなんで、みんな瞳の色は透き通るような青をしていた。

わたしたいな子供を生んでしまった母は、嫌がらせに耐え切れず手首を切って死んだ。
父もそんな母を追うように腹を切って死んだ。

二人とも、地面一体を真っ赤に染めてあるいは透明な水を真っ赤にして死んでいった。

わたしは一族の枠を抜けた。
水遁を得意とする能力だけは受け継がれていた。皮肉なものだ。
世の中に神なんて存在がいるのなら、こんなことにはならなかったはすだ。
わたしは神を信じない。


「随分古典的な考えだな・・・」
「うるさい」


隣でわたしの話を聞いていたサソリは、くくっ、と喉の奥で笑った。

わたしはこの瞳にすべてを奪われたんだ、文句あるか。
ていうかわたしがこの目に文句を言いたい、なんでよりにもよって赤色なんだわたしの目は。


「んなの知るかよ。お前の能力を買われて暁に入れた、それでいいじゃねぇか」
「あんまり嬉しくない、犯罪者のグループに属してるなんて」
「でもお前、あん時オレが拾わなかったらあの世逝きだぜ?」
「・・・死ぬつもりだったんだけど、サソリが邪魔したんでしょ」


任務の帰り、少し休憩がてらに湖のほとりに二人で佇んでいた。
きらきらと太陽の光を反射して、水面が綺麗に光っている。
少量のチャクラを流し込めば、水はわたしに従って様々な形をつくった。

わたしも、こんな青になりたかった。


「・・・オレは、お前の目の色が赤じゃなかったら放ってた」
「それ何回も聞いたよ。耳にタコができるくらい」
「くくっ・・・、幾度なく血を見てきたお前の目は、なによりも魅力的だぜ?」
「・・・どうだか」


遊んでいた水をそのままサソリの顔にかければ、なにすんだてめぇ、と睨まれた。
歳をとらなくなったその幼い顔で睨まれても、若干インパクトに欠ける。
イタチとかになればまた別だけどね、あ、鬼鮫なんかだともっと怖い。


「・・・オレはお前のその赤い目、好きだぜ」
「ありがとう」
「でもその余裕ぶった態度は大ッ嫌いだ」
「どういたしまして」
「・・・チィ・・・」


行くぞ、と腕を引っ張られてしぶしぶ立ち上がる。
立ち上がりざまにもう一度湖を見れば、赤い瞳をしたわたしと目があった。
サソリとおそろいの、赤い瞳。

ずっとコンプレックスだった、えぐってやりたいとも思っていた。

でも今は、


コンプレックス未満
(あなたと出会えた印だから)

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