手首はいつも真新しい擦り傷だらけだった。
あと一歩のところで、わたしはいつも生きていた。
リストカット。
それがわたしの存在している証。
手首だけじゃない、身体の至るところにわたしの“証”は痕を残す。
決して消えることのない、生を感じる愛しいもの。
「・・・、ん」
目を覚ませば、そこは小さな部屋だった。
・・・ああ、我愛羅の部屋だ。
生まれてはじめてと言っても過言ではない、ベッドというものに横たわっていつの間にか寝ていた夕べ。
辺りを見渡せば、木造のテーブルに書き置きがしてあった。
“任務に行ってくる”
簡潔な、我愛羅の字。
そっか・・・
また生を感じるために、血を浴びるために。
「・・・気をつけて」
まだ逝かないで、
そう願いを込めて紙を握りしめながら気づいた。
「・・・生きてほしいの?」
わたしは、我愛羅に。
生きていてほしいと願うのか。
死を望む、このわたしが。
「・・・我愛羅、」
ああ、わたしは、思ってはいけないことを思ってしまう。
「はやく、」
捨ててしまおう、だってわたしはただのぬいぐるみ。
「はやく、帰ってきて・・・!」
落とそう。
こんな感情、氷の海に投げてやればもう・・・
二度と浮かんではこない。
氷の海に身を投げる
(そんなの、得意技でしょう?)