オレはお前の笑った顔が好きだった。


「なんで過去形なの」


小さな手が、オレの手を握って。
大きな瞳が、オレの目を覗きこんだ。


「迎えに来てって言ったじゃん」
「無理だ」
「なんでよ」
「お前には笑っていてほしい」


なんだ、ただのかっこつけか。

頭に血がのぼった。
でも手は振り払えなかった。
その通りだ。
手放したくないし、オレはお前に、オレのそばで笑っていてほしいんだ。


「・・・知らねーぞ」
「いいよ」
「死と隣り合わせだ」
「サソリがいれば恐くない」
「バカが」
「バカになるまで溺れさせたのは誰よ」


黙れ。
お互い様だろーが。

今日は曇ってて月が見えない。
それでもオレのなかはスッキリと晴れ渡っていた。

いつのまにかお前は。


「サソリ、」
「なんだ?」
「すきだよ」
「・・・、オレも」



やっと素直になれた
(オレのなかにいた)

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