"迎えに来てよ"


お前は言った。
オレはただ、握られた手を握り返した。

ここにいるじゃねーか、なに言ってんだバカが。

にやりと笑えば、こいつはクスクスとそうだけど、と呟いた。


「でも、行っちゃうでしょう」


見透かしたかのような瞳に、なにも言えなかった。

オレはこいつには敵わない。
でもまた、こいつはオレには敵わない。


「・・・行かねぇよ」
「下手くそな嘘だね」


そんなの苦しいだけだよ。

満月を見上げながら、こいつは言った。
知るか。
だったらついてくりゃいーだろうが。

なんて、言葉にならなかった。
最後までオレは、素直になれねーのか。


「サソリのバーカ」
「うるさい黙れ」


握られた手の力が弱まった気がして、オレはまたさらに力を入れた。



言葉にならない
(きれいな月と君の嘘)
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