小さな手だった。
それでも少しだけ、温かかった。
俺を見ても怯える素振りを見せず、
砂を纏わり付かせても悲鳴すらあげず、
ただ左の手首を強く握った。
少女は血だらけだった。
傍には、お守りのように小さなカッターナイフが置いてあった。
俺を見ても逃げない、なんて。
過去の血で染まった手のひらを見つめて、後ろを歩く少女を見る。
あんな目は初めて見た。
深い悲しみに彩られ、死を願っている、そんな目だった。
「我愛羅、」
今にも消えてしまいそうな声。
振り向けば、無機質な表情の久遠が俺の目を捉えて離さない。
「血のにおいがする」
「・・・俺の、生きる意味だ」
「そう、わたしと同じ」
「・・・だから手をとった」
久遠は、たいして驚いた様子もなく、
小さく「うん」と頷いて下を向いた。
テマリとカンクロウの視線が纏わりついて苛々する。
「・・・見るな。殺すぞ」
「っ、ご、ごめん」
「が、我愛羅、どうしたんだよ?その女・・・、珍しいじゃん」
うるさい。
そう言ってあたりの砂を漂わせたら、
ふたりは静かになった。
恐怖に彩られた顔で俺を見る。
いつもの目だ。
もう慣れた。
俺は一度、握っていた手をほどいて、
深淵にて温もりを手放す
(離れないように、また強く握った)