食い物の恨みは恐ろしいと聞く。
今日の三時のおやつはマカロンというものだった。
やけにカラフルでこれが本当に食べものなのかと疑ってしまったが、口に入れてしまえば思いの外美味しかった。
団子には劣るが。
そして今は、
「・・・だれ?あたしのマカロン食べたの」
久遠が静かにご立腹である。
いつもはヘラヘラした姿しか見ないから、少しだけ驚いた。
久遠でも、こんな顔をするのか、と。
同時に嬉しかった。
また久遠の新しい一面を見られた、と。
ちなみに食べたのはオレではない。
「イタチ知らない?」
「わからない。デイダラじゃないのか?」
「なんでオイラだよ。オイラそんなにうえてねーよ、うん」
眉根を寄せたデイダラの手元には食べかけのマカロンが置いてあった。
間接キスもーらいっ、と言いながらデイダラの食べかけを口に含む久遠。デイダラが赤面した。
「おまっ、なんっ、なにしてっ・・・!」
「うまーい」
「久遠はいたって通常運転だぞデイダラ。はずかしがるだけムダだ」
「・・・っくそ・・・!」
複雑そうに久遠を見るデイダラの気持ちが少しだけ分かってしまった。
「でもあたしのマカロン・・・食べたのだれだしー!」
「・・・飛段とかじゃねぇのか?うん」
「や、ちがう。飛段さっきトイレいたから。オレのぞうさんとか聞こえてきたし・・・」
「・・・あいつはトイレくらい静かにできないのか」
「逆に静かにしてる飛段が想像できねぇな・・・うん」
静かにしている飛段を想像しようとしたら、かなりモザイクがかかった。
食べたかったのにーと眉尻を下げる久遠。
幻覚だが耳が垂れ下がったように見えたから、思わず頭に手を伸ばして撫でてしまう。
甘えるように抱きついてきたこいつを受け止めれば、デイダラから嫉妬心こもった視線をいただいた。・・・ドヤァ
「マカロン・・・あたしのマカロン・・・食べれないかわりにいい匂いするイタチを食べてもいい?」
「いいぞって言ったら?」
「え」
「はぁ!!?」
固まる久遠に叫ぶデイダラ。
冗談だと笑えば、二人して赤面した。
恥ずかしかったのか、その顔を隠すように肩口に顔を埋める久遠が、とても可愛らしい。
「自分で言ったのにぼけつほった・・・」
「ふ、オレに口で勝とうなんて百年早いな」
「今度からイタチにはなにも言わない」
それはそれで寂しい気もするが。
マカロンを食べた犯人がゼツだとわかるのは、それから少し後の事。