今日は昼から街へ出るらしい。
街へ出るとは言っても、少し歩いたところにあるコンビニで、自分の好きなお菓子などを五百円以内で買うだけだが。
二週間に一回のペースでこの機会は与えられる。
二列にならんで、隣の子どもと手を繋ぎ、迷子にならないように―――


「げ、オビトかよ」
「・・・久遠じゃないッスかー」
「わかったごめん!謝るからその静かなトビ口調やめて!」


怖いから!とわずかに顔を青くする久遠に、思わず笑いそうになった。

じゃあ出発するわよーと大きな声を出して先導する先生。
ふわりと包まれた右手に、今度は笑ってしまった。


「? なに笑ってんの?」
「いや」


久遠の温かな温度に、安心してしまうオレがいるのはどうしようもない事実だ。
それが少し悔しくて痛いくらいに握り返せば、案の定久遠は痛がって顔をしかめた。


「いたい!」
「いたくしているからな」
「ばか!」
「おまえよりはかしこいぞ」


くだらない会話をしながらコンビニに向かう。

久遠のすぐ横を車が通った。
・・・危ないな。加えてこいつはバカだから尚更危ない。


「久遠」
「は、うわっ!?」


繋がれた手を引っ張って、車道側に出る。
右手で繋いでいた手は左手で繋ぎ直して、前列と少し空いた距離を縮めるために小走りで駆け寄った。

呆ける久遠。
その面があまりにもマヌケで、オレはまた笑ってしまった。


「・・・オビト、よく笑うようになったね」
「そうか?」
「ついでにやさしくなった」
「オレがやさしいのはもとからだ」
「・・・あー、うん。しってる」


おばあさんのお荷物、持ってあげるもんね。

なんだか無性にイラついたから、久遠の頬をつねっておいた。

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