「久遠」


呼ばれて振り向いた先には、角都が仁王立ちしていた。
翡翠色の瞳が、しっかりとあたしを捕らえている。

サソリさんとじゃれていたあたしは、邪魔されたのが気に食わなくて少し顔をしかめながら角都を見上げた。


「なに?」
「ちょっとこい。話がある」
「えーあたし今サソリさんと、」
「こい」


問答無用で襟首を引っ張る角都、や、やばい首絞まる!
助けを求めてサソリさんに手を伸ばせば、サソリさんはニヤリと口角を上げてヒラヒラと手を振った。
はっ、薄情者ぉ!!!

角都はあたしをトイレの入り口まで引っ張ると、やっと解放してくれた。


「なに話って?こくはくだったらこたえはノーだよ!あたしにはサソリさんたちがいるから!」
「だまれしねころすぞ」
「・・・角都、てんせいしてから口がわるくなった?」
「ほんだいに入ろう」
「スルースキルをみにつけたね!」


自分の言いたいことを言ってあたしの言葉は丸っきりスルー。
泣けてくるよ。


「とどのつまり、金をあつめたいしょーどーにかられるんだ」
「いきなりだね!」


なんか、説明とか前置きとかすっぽかして本当に本題だけ言っちゃったよこの子。

角都はどこかウズウズとせわしなく動いている。
忍だった頃の日々は、賞金首を狩る毎日だったもんなぁ。
いきなり戦えなくなったって、体は覚えてるもんね。
タバコを吸う感覚と同じように、角都にとってお金を集めることはもはや当たり前だったのかな。

・・・だからなんだって話だけど。


「いや、でもおさえてもらわないとこまる」
「バイトでもいい。なにかできないのか」
「そのまえにここ、孤児院だからね!?」


目に見えて落ち込んだ角都。
いや、でも、マジでその衝動は抑えてもらわないと困る。


「きめたぞ」
「へ?」
「オレははやく大人になって金をためる」
「・・・へー」


角都って実はバカなのかなって思ってしまった午後一時。

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