つい癖で、
「イタチ兄さ、」
呼び掛けた時。
ぺちん。
可愛らしい音がして、頬に小さな痛みが走った。
あたしはビックリして目の前にいたイタチさんを見る。
イタチさんは若干、・・・っていうかあからさまに不機嫌そうな顔であたしを見ていた。何故。
でもそんな顔もあたしの胸をくすぐる。幼児化してるから尚更逆効果ですよイタチさんっ!!!
でも纏う空気が子どものそれじゃないから口は開かない。開けない。あたしなんかしたのか!?
「・・・ちがう」
「え?」
「兄さん、はいらない」
「え」
眉を寄せてあたしの両頬に小さな手を添えるイタチさん。
っち、ちか、近い顔近い・・・!
端正な顔をグイッと近づけてきたイタチさんは、あたしを殺す気なんだろうか。もはやそれしか考えられない!
顔が火照って爆発しそう。ついでに心臓も。
「よんでみろ、久遠」
「な、ななななにをですか」
「オレの名を」
「え、い、イタチ・・・さん」
イタチさんは緩みかけた頬をまた引き結んで、さらに顔を近づけてきた。
っちょ、それ以上近づいたらやばいです!
「"さん"もいらない」
「う、ぇ」
「イタチだ」
「わわわわかりましたから顔、顔がちかっ、」
「よんでみろ」
「〜〜〜っイタチ!」
ふ、と優しく笑ったイタチさんは、優しい手つきであたしの頬を撫でた。
う、う、心臓が痛すぎる。
イタチさんの笑顔が眩しすぎて辛いどす。
「イタチさ」
「イタチ」
「・・・イタチはいじわる、です」
「ふ、オレがやさしいなんてだれも言ってないぞ」
それに、今は同じ歳なんだから。
そう言ってイタチさんは、優しい目であたしを見た。