始まりの音
異世界から来た、ひとりの少女の物語が終わりを告げた。
白い服を真紅の赤に染めて、棺に横たわる。
仮面の男は一瞬だけ少女の頬を撫で、棺を閉じた。
もう"こちらの世界"では、会えないだろう。
後悔はなかった。
ここからまた、忍の残酷で哀しい物語が始まる。
そして、男はその中心となる。
すべては目的を果たすため。
・・・あわよくば、再会を果たす為に。
この世界は、少女にとって厳しすぎた。
あまりにも無情で、あまりにも悲惨だった。
幕を下ろしたことに、後悔はない。
ただ、少しの物足りなさが残るだけで。
少し、静けさが増すだけで。
"変えるって、決めたからねぇ"
男は仮面の中で笑った。
変えたよ。
お前はオレを、オレ達を。
だからこそ自分も、早く物語を終わらせよう。
そしてまた、お前に会いに行こう。
なぁ、・・・・・・久遠。