嘘に嘘を塗り重ね、憎しみを背負い、真実を隠して生きてきた。
それでも確かに弟と過ごした日々は、愛してくれる両親と過ごした日々は、愛おしかった。
だからオレの宿命はオレひとりが背負って死んでいけばいい。木ノ葉のことを恨んだことはなかった。

病に臥した。

オレはどこまでついているのだろう、どうせサスケとの戦いで死ぬつもりだったオレにとってそれは別段困ることではなかった。

自分の感情を殺すことは簡単だった。
苦しいと感じたことはなかった、いや、少しはあったのかもしれない。
だから今死ぬこの瞬間、少しだけ心残りがある。


「許せサスケ・・・これで・・・」


最後だ。

サスケは目を見開いて、そのまま前方に倒れた。
この後は、きっとマダラがサスケを拾うだろう。そして手なずけようとするだろう。それを止める術はもうないし、オレにはどうにもできないことだが。

力尽きた四肢が支える力を失い、オレの体は壁に向かって倒れる。
壁にぶつかるすんぜん、温かいものがオレの体を包み込んだ。

オレはこの温かさを知っている。この温かさに何度も救われた。

この温かさを、・・・愛していた。


「・・・・・・、久遠・・・、・・・」
「っ、イタチ、っさん・・・!」


"兄さん"をつけないのは・・・ただの気まぐれなのか・・・そうでないのか・・・

それよりも、・・・血で穢れているオレを抱く久遠の温かさが、どうしようもなく・・・愛しくて。


「・・・・・・、・・・・」


言葉が、出てこない。
それでも、伝わった、はずだ。


「みんな勝手すぎるんですよあたしひとり置いてって楽しいんですかこれって何プレイですか放置プレイですかそうですかもう勝手にしてください死ぬなら勝手にどうぞあたし知りませんからね泣き叫んでおかしくなってもみんなのせいだもんあたし悪くないもんどうせまた笑えとか言うんでしょわかってますよ笑いますよそのかわりみんなも笑っててください、」
「・・・・・・・・久遠・・・・・、」
「だいたいイタチさんは優しすぎるんですよそんな優しさ悲しみしか生まないですバーカバーカ今度会ったら思いっきり抱きしめて窒息死させてやる」
「・・・・ぁぁ、・・・・・」


頬に伝う雫は、雨か涙か・・・わからない。
前者なら・・・いいと、・・・願った。

久遠、久遠。
お前もサスケ同様・・・違う意味でも・・・オレの"大切"、だ。

・・・ああ、もう・・・意識が、・・・遠く、なる。


「おつかれさまでした」
「・・・・・・・、―――・・・」
「イタチさん、大好きです」


・・・ああ、

オレも、

お前を、・・・・

愛している。

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