野宿すると決めた洞窟内、無言で久遠の手を取る。
久遠は雨に濡れた顔で、弱々しく笑った。出会った当初のあの変態っぷりは何処へ行ったのか。・・・まぁ仕方のないことだろう。
立て続けに暁メンバーがやられたのだから。
でもこんな時だからこそ、いつもの久遠を見せてほしいと願ってしまうのは、わがままなのだろうか。きっと死んでいった仲間達も、そう願ったのだろう。たとえそれが、わがままだと知っていても。


「明日、決着をつけてくる」
「・・・はい、」


鬼鮫が無言でオレを見た。
久遠の知る未来にはきっと、オレはいない。
それがオレの覚悟で、病気をこれ以上延命できないオレの運命。

久遠は一度顔をふせて、さっきよりも強い笑みを見せた。


「・・・きっとそれでも、あたしは最後まで、」


変えたいと願います。

鬼鮫が無言のまま立ち上がり、洞窟から出る。
雨の降る音だけが洞窟内に響いた。
握った手は冷たい。伺える表情は作った笑顔。
こんな顔にさせているのがオレだと、オレ達だとわかってはいても、それでも。


「・・・すまない」
「辛気臭いですよイタチ兄さん!ほら、見てっ」


うつむいたオレの髪の間から覗く久遠の顔は、無理矢理にでもオレを笑わそうとしているのかとてもマヌケなものだった。
こいつを置いて逝こうとしているオレが、こいつに励まされるなんて、情けない話だ。


「お前はそのままでいろ」
「わぁ随分とわがままな」
「わがままでいい。それがあいつらの願いでもある」
「わかってます」


散々言われましたよ、みんな無責任ですよね。
笑った久遠の目に光る涙に、気づかないフリをしたまま、オレは小さな体を抱きしめた。


「・・・死なないでください・・・、」


小さな声にも、必死にすがりつく手にも、気づかぬフリをしたまま。

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -