「・・・これを、護身用に持っておけ、とのことだ」


突如マダラ口調に戻ったトビから渡された小さな・・・鳥?
触った感触と独特な匂いから、デイダラが創った造形物ということがわかった。

死闘を繰り広げるふたりを地上から見上げる。


「・・・気になるか」
「気にならない方がおかしいよねコレ」


デイダラが鳥から落ちて、思わず声を上げそうになった。
ああ、もう、あと少しで・・・

駆け出したくても体が動かないのは、さっきからあたしの腕を掴んで放さないマダラのせい。
どれだけ抵抗しても睨んでも、マダラの力には敵わない。
デイダラを助けたくても、叶わない。

デイダラの怒号が聞こえた。
芸術をなんとも思わないサスケにとうとうキレたのか、今までの冷静なデイダラじゃないことくらいはあたしでもわかった。
刻が、きた。

マダラの隙をついて腕をほどき、デイダラがいるほうに足を動かす。
刹那、あたしの手の中にいた鳥が巨大化してあたしの服を加えて飛んだ。・・・え!?


「ちょっ・・・!!デイ、ダラ・・・?、」


木々の間から見えたデイダラは、確かにあたしの方を見て笑ってた。
今まで見せてくれたどんな笑顔にさえも勝るような笑みで、親指を立てて。

心臓部分の口が粘土を加える。それでも笑ったまま、デイダラは言った。


「・・・またな!」


その直後、わずかに動いた口元。
声は出ていなかったけど、あたしにははっきりとわかった。


***


それは、オイラの芸術を認めてくれた時から始まった。

最初はただの変態女ってだけだった久遠が、知らねぇうちに頭から離れなくなっていった。
あいつが笑えばオイラも楽しくて、あいつが泣けば心配になる。
泣いてほしくなかったけど、弱いところも見せてほしくて、それがいつも旦那かイタチの野郎だってのが気に食わなくて悔しくて、

こんな気持ち初めてで、


オイラは素直になれねーから、久遠の言う"ツンデレ"なのかもしれねぇ。
素直になれてねーオイラに気づいてくれてる事実が嬉しくて、でも素直にはなれなくて、悪循環ばかりで。
いつもそっけなくしてきた。
お前はいつもオイラにたくさんのモノをくれたのに、オイラがあげれたのは"自爆するオイラから久遠を守る"ためのあの粘土ひとつだけ。

許せよ、これでも自分じゃ恥ずかしいくらいデレてんだよ。・・・うん。

いつか、悟ったように笑った旦那の想いが、今になってやっとわかった。
オイラは、オイラ達は死ぬ。
久遠の目の前で、死ぬ。
そして、願う。
死んだあとも、ずっと一緒にいたいと願う。だから怖くねぇんだ。一ミリもな。

ここまでオイラ達を変えたのは、まぎれもない、お前なんだぜ?

久遠!!!


「・・・またな!」


一足先に、行ってるぜ。


***


"すきだ"


爆発範囲から逃れた鳥は、あたしをくわえたまま飛行を続けた。しばらくたって、雨が降ってくる。地面に降り立った鳥が小さくなって手のひらに戻った。


「・・・・・・・・・・・デイダラがデレた、」


嗚咽に混じったあたしの声は、雨に消える。

ぱしゃ、

地面を踏みしめる音がした。
なんとなく振り返らなくてもわかった。低い声があたしの名を呼ぶ。


「・・・久遠、」
「・・・行きますよ」


もうこれ以上、失うのは嫌なのに。

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